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怪猫呪いの沼のhorahukiのレビュー・感想・評価

怪猫呪いの沼(1968年製作の映画)
4.1
夏は怪談!!

ネコちゃんの可愛いさが堪んない怪猫映画の傑作!『プロミシングヤングウーマン』でリベンジムービーが注目浴びてる…のかどうかは知らないけれど、お殿様に人生めちゃくちゃにされた若い男女たちの無念を晴らすために、ダークヒーロー化したネコが復讐に乗り出す!!

監督は『東海道四谷怪談』の脚本家で知られ、本作と同じく怪猫映画である『怪猫お玉が池』の監督でもある石川義寛。中川信夫監督から影響を受けたのであろうバッキバキにキマッた構図・カメラワークが映し出すザ・怪談な幻想的美しさが最強に綺麗で眺めてるだけで眼福な映画でした。

主軸は鍋島猫。お殿様に謀反を働き殺害し、殿の座を奪った鬼畜なニュー殿は女癖が最悪だった。殺した旧殿の奥様を自分に靡かせようと軟禁→嘆いた奥様がネコと一緒に沼に身投げ。それから数年後、ニュー殿に仕えている好青年の婚約者・ゆきじに一目惚れした下半身が脳みそなニュー殿は「俺の奥に入れ!さもなくばお前らの家を潰すぞ!」と脅迫。必死に抵抗するも虚しく殺され、ゆきじの血を啜ったネコちゃんがダークヒーロー化。ニュー殿の屋敷に侵入し復讐を開始する…。

負の方向に感情を高めてくるセミの声と、真逆なひぐらしとの使い分け。そしてカエルの声も含めて、夏ならではの自然音によって茹だるような行き詰まった感覚、「終わり」へと向かうひとときの温かさ等々の感情や今後の展開を音に代弁させるきめ細やかな演出。シンメトリーを人物の移動によって崩すことで裏側の意図を推察させたり、既に確定してしまった運命のような一方向の動線とその場凌ぎのやり過ごし、絶望を閉じ込める小さな枠、雷鳴が鳴り響く空をバックにした絶体絶命な斬り合い等々、物凄く丁寧に作られてる。

絶体絶命の状況、自身の決意と受け継いだ大事な思いを背負って、敵に向かい静かにゆっくりと刀を抜く厳かな主人公のカッコ良さと外連味は、普通の時代劇ならば勝ち確を思わせるようなクライマックス的雰囲気なんだけど、怪談だから当然その先は決まってしまっているわけで、「もう怪談とかどーでも良いから勝って欲しい!」と純粋に思わせてしまうほどのそれまでに至る丁寧な土台の形成がほんと凄い!

あと、ニュー殿の嫌われ具合も見どころ!旧殿の奥様は「ニュー殿と結婚するくらいなら…」と身投げし、ヒロインのゆきじも「こんなのと結婚するくらいなら…」とナイフで自殺未遂を図り、家老の妹も「あんなサイテーな殿の奥に入るなら…」とこれまた自殺するっていう…。ニュー殿はマジで最低最悪なクソムカつく野郎なんだけど、命と結婚を天秤にかけて、更にそこに金と地位のアドバンテージを加えてすら全敗するモテなさすぎ具合がちょっとだけ可哀想になった🤣
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