Jaya

生れてはみたけれどのJayaのネタバレレビュー・内容・結末

生れてはみたけれど(1932年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

引っ越してきた郊外で父が重役に媚び売るさまを見て傷付く兄弟のお話。「爆弾三勇士」の額縁かかってたのか…。この頃からエキスパンダーがあったとは。

場所は蒲田ということで、頻繁に通る東急。子どもたちを映し出す技量が素晴らしい。兄良一と弟啓二の対比が途轍もなく美しく愛らしいです。良一が上手すぎます。啓二のコミカルさの演出も凄い。喧嘩やら遊びやらのリアリティも凄い。

父、ひいては父権への幻想が崩れ去る兄弟。それでもそこに残るものが鮮明に美しく描き出されます。反抗の様子も愛らしい。彼らも多かれ少なかれ同じ形を繰り返していくのでしょう。

卵やら筒やらよく分からないアイテムが出てきますが、当時としてはあるある的な象徴なのかな。完成されたような固定カメラの構図やカット割りと、ここぞというときのズームアップが美しい。

余りにも優しいお父上を含め、中流以上のようで、果たして庶民的と言える世界なのか疑問に思わなくもないですが、それを普遍的な物語にきっちり昇華させているのが凄いです。

子役の配役も素晴らしく、さすがの観察眼で時間の壁も悠々と超える家族の姿の相似形と、人々の心の襞を美しく描き出した傑作でした。
Jaya

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