小

ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~の小のレビュー・感想・評価

4.0
お母さんを愛するお父さんの姿が眩しすぎた。お母さんを思う心と行動に圧倒された。二人の関係に自分の未熟さを自覚させられ、胸がチクチクした。

愛って時として相手より自分の気持ちを優先しがちで暴力に似ている気がするけれど、愛が噛み合ったとき、とてつもなく美しい。

いてもいいの? いて欲しい、いてあげたい。フィクションの世界だと白々しさを感じてしまうようなことを、90歳を超えたおじいちゃん、おばあちゃんのリアル関係で目の当たりにし、素直に感動してしまった。

ともに家族を支えてきたがための晩婚らしいけど、他者のためにという経験は人を成熟させるのだろう。

ぼけてもなお自分より家族を大切に思うお母さんの叫びに戦慄する。求めている、求められているという自覚が生きる力になることが良くわかる。

介護の負担はときに不幸な出来事を招くけれど、愛が噛み合えばその負担を生きる力に昇華し、人を美しく輝かす。

本作はそれにほんの少し近づけるよう、心持ちをほんの少し変えてくれるかもしれない。
小