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すずめの戸締まりのyuminagabeatoのネタバレレビュー・内容・結末

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

ユナイテッド・シネマ橿原にて鑑賞。新海誠作品は『君の名は。』しか観ていない。しかも本作公開記念で放送されたTVの金曜ロードショー。今や代名詞となった大ヒット作だがこれまでなんとなく気のりがしなかった。しかしこれまでの世間の評価と新海監督に対する自分の偏見を一旦リセットしてフラットな気持ちで観てみたら意外と楽しめたので、それなら本作も観てみるかという感じだったが、予告で感じた印象と『君の名は。』の両方を超えることはなかった。予告(特に主題歌すずめ)の雰囲気が良過ぎたのもあるが、金ローで本編の冒頭6分を先行放送するというありがた迷惑なサービスがあり、それをまんまと見てしまった結果、この作品に余計なバイアスをかけてしまうことになった。恋愛映画以外のジャンルでは恋愛要素がどうしても雑音に感じられる自分にとって、この作品でもやっぱりガッツリ恋愛を見せられるのかという思いだった。まあこの手のアクションファンタジーで一般の女子高生が積極的に主人公の男のお手伝いしようとしたら一目惚れでもするしかないからしょうがないんだけれど、後ろ戸や常世、ミミズ、要石、閉じ師等々の設定は陰陽師の雰囲気があって凄く魅力的なのに、余計な恋愛要素のせいで魅力が薄まった気がする。保護者の環を明らかに慕う後輩男性をわざわざ登場させるとか、新海監督って本当にお姉さんキャラとの恋愛話が好きなんだなあって感じ。あとストーリーは面白いのに、鈴芽がトラブルメーカーになってしまっているのが見ていてしんどくなる。もはや鈴芽が災いの種みたいになっており、最後に自分が要石になると言った時変に納得してしまった。結局ならなかったけど。草太を要石にした時のトロッコ問題が名シーンだっただけに、ここももっとカタルシスが欲しかったかな。あと気になったのが色んな既視感。ジブリ作品に対するオマージュなのかリスペクトなのかダイジンの「すずめ、すき」はポニョだし、「耳すま」というワードが出てきたり、ユーミンのルージュの伝言からの「猫もいるし」発言は魔女宅。草太のビジュアルや扉の先の常世のイメージはハウルっぽいし、ミミズはもののけ姫。ミミズといえばエヴァの使徒っぽいなとも思った。倒した時、内圧が高まってブクブク気泡ができて破裂したり、そのあと雨が降る(エヴァの使徒は赤く液状化)様子も連想させる点だった。懐メロの多用もこれまたエヴァの得意技。宮崎駿監督庵野秀明監督を意識し過ぎでしょ。そんな大先輩の力を借りなくても大丈夫なのに実にもったいない。東日本大震災をベースにした物語なのに暗くなりすぎず、ちゃんとエンターテイメントに仕上げたその手腕は本物だと感じた。本作が新海誠監督の集大成?とんでもない。本作は通過点、集大成はまだまだ先だと、もっともっと新海誠らしい面白い作品ができる監督だということがこの作品で確信できた、そんな映画だった。
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