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ザ・メニューのyuminagabeatoのネタバレレビュー・内容・結末

ザ・メニュー(2022年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

シアタス心斎橋にて鑑賞。予告でチラッと見た時は、孤島のレストランで不気味なことが起こるのかみたいな、不穏な雰囲気が気になる程度だったが、公開後の評判が良さそうなので徐々に期待が増していった作品。感想は予想どおり全編不穏な雰囲気満載で、最後まで飽きることがなかった。天才シェフの独自の世界を味わおうと大枚をはたいて予約したいずれ劣らぬ個性的な客たち。そして客たちもそれぞれに個人的な事情を抱えながら参加している。給仕が始まり、奇をてらったサプライズに客は面食らう。それは映画を観ている我々も同じだ。一体どこまでが演出か?どうやらTVの過剰な演出に慣れきっているらしく、その辺の境い目が曖昧になっているようだ。パンのないパンメニューまでは笑っていられるが、一切融通のきかないスタッフに不安は頂点に達する。そして副料理長が拳銃をぶっぱなした時点でこの演出が本物の狂気を帯びていることが分かる。シェフは恐怖と共に料理を味わわせようとしているのだ。感心したのは客の秘密を暴露するタコスの演出で、監視されることも立派な恐怖だと改めて再認識した。シェフが客を巻き添えにした演出を考えていると明らかにしてから、後半のシェフとマーゴの直接対決は心理戦肉弾戦共にヒリヒリとした緊張感で見ごたえがあった。マーゴがバイオハザードのミラ・ジョボビッチに見えてきたあたりから、ずっとアクション映画を観ている気分だった。タイトルどおり、メニュー仕立てで構成されているこの作品、観た後は満腹である。なぜなら監督という名のシェフが全て計算ずくで料理を提供しているから。ジャンル分けはホラーとなっているがホラー一つだけに収めてしまってはもったいないと思う。もしこの映画が料理としてメニューに載るとしたら、グルメに対する痛烈な皮肉のサイコスリラーサスペンス仕立て絶望デスゲーム・格闘アクション風味を添えてと書いてありそうな、そんな映画だった。
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