漫画版のみ読んでて大好きな作品。評価が高く、スタッフもかなり良かった『ウルフウォーカー』のスタッフと言う事で、期待し過ぎてしまった。絵も音も動きも高品質な作品であることに間違いは無いけど、元が好きな人には物足りない作品になってるんじゃないだろうか。
脚本はとても大胆な取捨選択がされて前半は上手く再構成されているように思えた(特に長谷に関しては上手くコンパクトに処理できていたと思う。長谷の凄さももっと描いて欲しかったけど。)が、当然だけどクドさ濃密さがかなり失われていて、岸涼子を削った事で羽生と深町の縁がか細くなってしまって、首を傾げるところが何箇所か。ダイジェスト版としては良いのかな。2部作にすべきだったんじゃないか。自分の大好きなシーンが尽くカットされてしまったのがとても残念で、バランスは難しいし、決して貶められるような作品では無いが、手放しに喜ぶことは出来なかった。
全体的に説明不足の感は否めない。説明不足に由来して、山の高度の寒さと風の怖さ不足、鬼スラとグランドジョラスの生還の迫力不足が目に付いて、最高！とは絶対に言えないものだった。日記をカットされたのがとても痛い。あれが羽生と言う男を物語るエピソードでもあったし、『神々の山嶺』と言う作品の中盤の肝だっただけに、残念。
終盤は中々の出来だったと思う。前述の通り羽生にとって深町はほとんど知らな人なのでなんか不自然に感じるところはあったけど、漫画への橋渡しとしてはこれで良いのかな。ラストも今となってはこれでOK。とにかく、この映画を見た人には絶対に漫画版読んで欲しいと思った。もっともっと凄いんだ。もっともっと心に響くんだよこの作品は。
基本的にモノローグを無しにして映像で語るようにしたのは演出方針だと思うけど、元はそのモノローグが滅茶苦茶良い作品なだけに、そのダメージは計り知れない気がする。
羽生の日記の「きしよう……」や深町が外で吐いて泣いて涼子と話すシーンや深町と羽生の最後の邂逅など、このクオリティでしっかり見たかったな。
