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透明人間のhorahukiのレビュー・感想・評価

透明人間(1933年製作の映画)
3.7
元祖スクリームクイーン!!

特撮技術は言わずもがなだけど、原作ではもう少し理知的な雰囲気もあったのに完全なキチ◯イババアに成り下がった宿屋の女将のスクリーム技術の凄さに驚かされる。画面外からも怒号のように響き渡るロングボイススクリームの迫力は必見!いや必聴!

物語は基本的に原作準拠。原作エピソードを2、3のセリフで綺麗に中抜き省略していくスマートな脚本。ホームレスのエピソードとケンプのエピソードをそれぞれ無理なく繋ぎ合わせ、透明人間が人々にとっての脅威として認識される暴行事件へと発展させる舞台づくりも綺麗に融合させてる。

オッサンジョークから戯けるウェイトレスそしてドヤ顔でピアノを弾くフリをしてるジジイへと賑やかな楽しさだけを繋いでいくバーでのカメラ運び。その空気を切り裂くように、吹き荒ぶ雪と共に入り込んでくる包帯男。内に閉じた世界だけで楽しさも生活も循環し完結している田舎という舞台に外から侵入してくる異形への拒否感。「ここ数年で一番寒い冬」という女将のセリフからも如何にこの時期の旅行者・部外者が異常なのかが浮き彫りになり、穏やかな水面に落ちた一滴のシズクの異様さを際立たせる。そしてそれは白い雪の中を黒が一人歩くファーストカットの対比へと還元される。

「神の領域に足を踏み入れた」といったようなセリフからも分かる通り、ホエール監督的には自身の『フランケンシュタイン』と同様なマッドサイエンティストものとして本作を意識しているのがわかる。ロマンス要素を無理矢理追加したのも「帰ってくる場所」との対比を利用するためというのが大きいのだろうけど、透明人間という存在が象徴するものとの間に少しの「破綻」が見られるのは非常に残念。それでも作劇的には破綻なく強引にまとめてしまっていることから考えると、その「破綻」も敢えての選択だったのかなと思った。むしろ監督の優しさとも取れるように思うし。

そして透明人間がなぜ元に戻りたいのかといった動機部分も非常に重要な要素だと私は思っていて、本作の場合にはさすがに強引すぎで元に戻りたいのは当たり前という前提にたった上で物語を進めているのが気になった。性格の変容も訳のわからん薬の副作用としてしまったところは『フランケンシュタイン』の犯罪者の脳への改変と同様で雑なのか、先ほどと同様に監督の優しさなのか判別できないけれど、違和感が残った。動機部分は観客が自身に投影した場合に抱くであろう常識的価値観に委ねることで描写を省略したという作劇的な理由づけはできるし、そういう面ではうまくいっているのだけど…。

というか、ワネル版はいつ公開になるのでしょうね😅下手したら今年の公開はないかもしれないし、それまでにじっくりとシリーズ見ていこうと思います👍
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