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フェイブルマンズのRのレビュー・感想・評価

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)
5.0
わーーーーーーーお!!! 何と素晴らしい作品でしょう!!! 全編、黄金の光に包まれたような、奇跡のように美しい映画だった!!! 何と本作は、スピルバーグ監督によるスピルバーグ自身の伝記的作品! 映画作家の自伝作って、面白いのが多いけど、どれもこれも癖が強いイメージが強くて、本作もなかなか見る気にならんだろーなと思ってたら、マイブー君に勧められ、見ないわけにはいかないな、と。結構長い作品なので、3日くらいに分け分けしてみよーかな? とか思って見始め、次々と展開するマジカルなモーメントの連続に陶酔、そして、気づいたら、終わってた……え⁈ ここで終わり⁈ って、爆笑のエンディングシーン、何度早戻しして見なおしたことか!!!🤣 まじで素晴らしすぎた!!! やっぱすごいわスピルバーグ!!! まず本作は、スピルバーグが幼少期にて初めて映画館に映画を見に行くところから、唐突に始まります。あ、一応、劇中、スティーヴン君は、フェイブルマン家のサミー君と名を変えている。サミー君は、暗い映画館が怖い怖いと怖がっていて、ほんまに映画なんか見て大丈夫かと心配してるんやけど、お父さんとお母さんそれぞれが、映画についてサミーに語りかける、父「映画はスクリーンに投影するもので、1秒24コマの静止画で構成されるんだ。人の脳は16コマぐらいしか処理できないから、残りは残像で埋められて、動いてるように見える、ゆえにモーションピクチャーというんだよ」、母「映画は夢のようなものよ」と。最初のこのシーンで、映画とは一体どういうものか、という全編に通ずるテーマを端的に言い表しているのみならず、父と母の性格の違いを鮮やかに描いている。父は、バリバリの理系人間、キャンプに行っても、どのようにして火を起こすかを科学的に説明しようとし、背の低い木に抱きついて右へ左へぶんぶん揺れてキャーキャー遊んでるお母さんのところに子どもたちは逃げていく。お母さんは、結婚と子育てのために、ピアニストとして、アーティストとしてのキャリアを棄て、主婦になっているけれど、自由なスピリットで落ち着きがない、家事もやってるよーなやってないよーな(紙フォーク、紙テーブルクロスなどの使用笑)。一方、お父さんはというと、理系やけど、気難しいということはなく、落ち着いてて優しく、妻の自由さを大らかに微笑んで見守ってるステキな旦那さん。めっちゃいい夫婦やん。で、内容飛ばして話してましたのでちょっと戻ると、はじめてのサミー君の映画経験がトラウマ的なもの(地上最大のショウの機関車衝突シーン!)だったので、そのトラウマを乗り越えるために、あなたが映画を撮ればいいのよ、とママに勧められ、ハヌカの夜にもらった模型機関車で衝突シーンを再現する……以来、すっかり映画を撮ることにハマってしまい、先述のキャンプ時にもカメラを握りっぱなし。夜には、車のヘッドライトを浴びながら、舞いを舞うお母さんの姿をカメラに収めるシーンが大変美しいのだが、母(サミーの祖母)が亡くなったことで元気をなくした母のために、キャンプの映像を編集しているサミー君……何度も何度も繰り返し同じフィルムを覗き込んでいると、その中に、衝撃的な母の秘密を見つけてしまう。このシーンのサスペンスフルな演出は本当に素晴らしく、本作のピークのひとつとなっている。何度も写されるフィルム、サミー君の表情、バックグラウンドでお母さんの弾いている悲しげなピアノの旋律。何と濃厚でエモいワンシーン! そして、そこから少しずつ家族に暗い影が投じられることになるのです。このあたりは、場面としては重いテーマなんだけど、さすがスピルバーグ、根っからの楽天家なのか、魔法のように素敵なシーンが合間合間にはさまれ、見てて本当に心地よい。特に自分で撮った映画をはじめてみんなの前で公開するシーンの感動は、サミー君の複雑な感情を通り越して、非常に深いものになっている。さらに、引っ越しでまったくユダヤ人のいない地域に暮らすことになったときにも、ユダヤ人として差別を受け、いじめを受けているのに、それでもへこたれることなく、一風変わった性格のガールフレンドまで作って、学校主催のビーチでのおさぼり遠足デイではカメラマンになることを申し出、それがどのようにみんなに受け入れられるか……もーさいこーなので見てください! 歓喜で胸が熱くなった!!! ところが、面白いことに、本作においては、母の秘密を筆頭に、映画というものが図らずも人を傷つけてしまう、映画によって自分が傷ついてしまう、という側面が兎角強調されているように思う。映画とは、ひいては芸術というものは、全般に、みんなの心を沸き立たせる娯楽であると同時に、その反作用も確実に発生してしまう、そういうものなのでしょう。ラストシーンの某監督の苦渋に満ちたセリフにもそれは明確に表れていた。あと、もうひとつ見てて興味深いなーと思ったのは、サミー青年が、とにかく運に恵まれているということ。彼が求めているものは、すべて、不思議なほど都合よく彼の手に入っていく。もちろん、本人が並みならぬ研究と開発を行っていってたという事実も確かに存在したのだろうが、そこの部分はほとんど描かず、悲しみや苦しみがありながらも、映画のキャリアという点ではひたすらトントン拍子で進んでいく。もしかしたら、そのような恵まれた境遇に自分を置いてくれた運命に感謝を表した作品であるのかもしれない。本当に、冒頭から最後の最後のショットまで、喜びと甘さとほろ苦さが見事な調合、まさに奇跡のような、魔法のような超贅沢な一作となっております! 映像、音楽、キャメラ、編集、すべての演出がキュートでエレガントでパーフェクト! 少々感じられるアンバランスささえ、そのデリケートな完成を支えていた。演技もみんな素晴らしかったが、特に心を打たれたのがパパを演じたポール ダノ!!! 彼が最も愛したふたりを、自由へと解放したときの表情が……もう僕の胸はいっぱいいっぱいで、うわーーーーーーーーーーーダノーーーーーーーーーーー!!!と叫んでしまいましたわ。いままで僕の中で、スピルバーグの作品は、宇宙戦争かブリッジオブスパイかペンタゴンペーパーズがNo.1の座を競っていたが、正直、たった今の感想では、本作がその3作をいともたやすくひょいっと超えてしまったんじゃないかと思ってます。ひょっとしたら、再度鑑賞した際にはマイベスト10に食い込んでくる可能性も……どうなることやら。
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