140字プロレス鶴見辰吾ジラ

NOPE/ノープの140字プロレス鶴見辰吾ジラのネタバレレビュー・内容・結末

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

【対峙】

ジョーダン・ピールの期待の新作「NOPE」は、ジョーダン・ピール「オカルト荒野へようこそ」だったのだと思う。未確認飛行物体の撮影に挑むルーザードッグスの奮闘劇。白石晃士映画のような異形が映り込む質感をビッグマネーを掴んだピールが、スケール感の大きいオカルトへとハネ上がらせる。これが堪らない。

本作は「対峙すること」に対して「覚悟」「リスクを背負う」ことを描いた挑む者の執念や異常さ、滑稽さをホラー調の音楽と夜闇と少しの灯りによる視認困難だが、察知はてきる広い空間において不穏に不穏を重ねて展開していく。

冒頭は、チンパンジーのゴーディのドラマで起きた惨劇を描く。ここではリスクに対するエピソードとして機能する。チンパンジーは調教てきない凶暴性を秘めていることを人気者にもなれる愛嬌をもつ動物の起こした惨劇として配置すると終盤へのミスリードというか不穏の増幅効果があったと思う。

次に妹と兄。ヒロインは多動性だし、兄は人と目を合わせるられない陰キャ。欠陥をもったルーザーの枠。妹の行動力、兄のコミュニケーション下手さ、これが未確認飛行物体撮影への原動力だったり、未確認飛行物体の強襲を回避する手段としても用いられる。兄の目線を合わせられないコミュ障が中盤の回避戦略、終盤のリスクと向き合います対峙するに至るエモーションの先導は素晴らしい。

そしてとある監督、撮影者の存在がクライマックスに向けて配置されるところ。白石晃士シリーズの撮影者のカメラを止めない、離さない狂気じみた精神。マッドサイエンティストにも近いし、ローテクの逆襲の映画文脈的な精神も担っている絶妙な助っ人キャラ。

それが最終決戦へのシークエンスとして並べられたトランシーバーというエモーション指数の高いショットとチームモノの様相からブースト。対する未確認飛行物体は本作の最終予告における形状変化からウルトラマンレオの「恐怖!円盤生物シリーズ」のハリウッド版なのだとニヤリとさせられた次第だが、「未知との遭遇」は「怪獣映画」とオカルト濃度を上げて眼前に顕在化する。

撮影する第1クライマックス、異形を倒す第2クライマックス。チームの絆→兄妹の絆とエモーションのバックグラウンドミュージックも見事に決まる!

リスクを冒すことで自己実現を行い、リスクを背負う覚悟をすることで、勝利するという根底は、個人の感想だが、ジョーダン・ピールという男がコメディアンであるがゆえのリスクを背負って人を笑わすという舞台で培った精神が、LIVE感というニュアンスも含んで、「トップガン マーヴェリック」のマッハ10への挑戦とドローン戦闘機の合理性に浸食される無常観を映画に問うているようにも思えた。ローテク技術での撮影、セット組のクライマックスは、序盤の撮影所のグリーンバック→CGの代用というニュアンスを含んで、映画というコンテンツ、撮影して実写化→顕在化させるという手順における体温が失われることへの危惧を言っているようでならなかった。

ファーストカットとラストシーンの韻の踏み方も素晴らしく、リスクを背負えない者、覚悟のない者はコンテンツと対峙する資格がない?とでも言いたげなアグレッシブな姿勢は、現代における映像氾濫の世の中にシンジラレルを思いたくなる。

自己実現のための覚悟が馬を、バイクを、夢をも乗りこなそうとする様はステキな映画のフォルダーに記憶されたわけだった。※「AKIRA」オマージュもテンション上がるわけで。