140字プロレス鶴見辰吾ジラ

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3の140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

4.7
【無限に広がる青い空】

かつて「ドラ泣き」なんて下品極まりない邦画のキャッチコピーが話題になりました。本作は「ガン泣き」てあります!(※ジェームズ・ガン監督映画で泣こう!略して「ガン泣き」であります。)


ガン監督の作品の情緒を沸点に押し上げる手法としての回想シーンの妙。VOL3は、ロケットの過去が語られます。VOL2で実質的な主人公となったロケット。ここのVOL2~VOL3の繋ぎ方が素晴らしい。だって、オープニング一発目でかかった曲、アレなんですか?って。こんなド直球な楽曲でくるの!?って。

本作、GotGVOL3の凄さは三部作一度もスベらず完走したことでもありますし、本来エモーショナル的に大事にしようとして構成が渋滞する三部作のラストをあまりにも見事な卒業映画として、そして旅立ちと後輩映画として閉じたことです。前半のあまりに大きすぎるフリ。回収前提、泣かせ前提のフリに対してのまんまと泣いてしまう。むしろ逆説的に本作で彼らにお別れすることを映画鑑賞にて泣くという行為で閉じるために、実際どんなフリにも泣きでファンがレスポンスするような形。本作内での前フリとクライマックスでの泣き、そして三部作の始まりに投げられたボールが三部作の最後に継承という形で捕球される大きな大きなキャッチボール。血よりも濃いモノを見せられた!

忘れてはイケないのが音楽の治癒性について。読書するときに敢えて音楽をかける人がいると。それは外界のノイズの遮断しての音楽。本作は三部作でもっとも生々しく禍々しくおどろおどろしいイメージ、不安、恐怖といったストレスが積み上がります。これが本作のガーディアンズにつきまとうノイズになります。それをペースチェンジとしてイカしたイントロのロックチューンでカラッと空気を入れ換える妙。メタ的にも音楽のチカラが癒しや解放、そして逃避と対峙のキーとなるという三部作の裏テーマをもっとも濃く濃く表現していたと思います。ロケットを過去を掘り出したことで後戻りは出来ないのですが、この物語は会話シーンも歩きながらなど運動要素的な場面の止まらなさなど余念がありません。だから彼らは前に進むということ、不可逆なモノに囚われないことでクライマックスに向け成長をするのです。そしてガッツリと空いたガン泣きの穴に嬉々として飛び込んで行くのです。

無限に広がる青い空。ボクらも乗せて飛翔できなかった傷ついた日々があり、いつの日かあの青に届かせる想い、仲間があらんことを。