140字プロレス鶴見辰吾ジラ

オカルトの森へようこそ THE MOVIEの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

4.0
【NOPE】

白石晃士作品の魅力は、POVという固定された疑似視点に見る実景に映る異形の禍禍しさ、不穏、ワクワク感。大晦日に紅白歌合戦そっちのけで、ビートたかしの超常現象特番を見ていた私には堪らない。現在公開中のジョーダン・ピール最新作「NOPE」もスケール感ある実景に映る異形にワクワクしたのだが、本作は白石晃士作品を見続けた身としては、実家のような安心感と体温、そしてスケール感が足されたことで生じるハリウッド系統作品のつまみ食いをしたような加算体制にさらにテンションが上がった。

作中で「傑作を撮る」と意気込む姿は、10年以上前に「ノロイ」「オカルト」という長編映画を世に出した白石晃士の劇中の情感と監督としての情感が入り混じるエモーションを感じてならない。それゆえの白石晃士バースのキャラクターの助っ人から継ぎ足し継ぎ足ししている白石晃士秘伝のタレをふんだんに使いつつも、アクション映画としてのヴィジュアル→実行のイメージが、銃撃シーン、カーチェイスシーン、ジュラシックなシーン、戦争映画的な被弾シーンと随所に挿入される。映画以外にも「笑ってはいけない〇〇」を模したシーンの登場も、等身大からステージを上げようという気概が感じられつつ、戦闘準備のカットに時間を要する体温の流しどころのアンバランス感が心地良い。

アクション映画していて、スケール感、スペクタクル感を出そうとしつつ、本作はジュブい映画でもある。(ジュブナイル映画的という意)キャラクターのモチベーションの上げ方が、男女共にストレートに異性に対しての意識からくる活力なところは、オッサン映画としてダサさが満載だが、ジュブいからこそドライブ感があった。セガール的な立ち回りをする宇野祥平演じる江野(白石バースお馴染みキャラ)は、一見さんにはアンバランスだが、白石バースの江野くんを見続けたファンならブースト感あるキャラで良い。

劇中で「傑作を撮る」に対してメタい発言が散見されるが、本作が傑作かどうかを気にしない箱庭属性か、白石晃士にメジャーになって欲しい野心属性かで、少々意見が割れる部分もあるだろう。※個人的には箱庭7の野心3だ。

何より筧美和子の存在感が目を惹いた。吉田恵輔の「犬猿」でも良い役回り立ち回りだったが、「犬猿」ではグラドルとしての筧美和子の利用価値が表れる部分があったが、今回はストレートに筧美和子を女優として扱っていた(扱おうとした)ところがエモく、本作のジュブさをより高い位置に設定している。

終盤は、白石晃士映画の中では屈指に人が出てくる。それが本作の対象を撮影するためのリスクを背負うこと、覚悟することにも繋がり、ここで「NOPE」との精神的な符号を感じた。そのリスクと覚悟に関して、映画内の目的のためとはいえ、一線を超えるようなミッションクリア条件を突きつけられる場面もあり、メジャーを目指す傑作としては、攻めどころがリスクに対しての過剰性を伴ったかのように見えるが、そこは白石晃士のポトラッチだろうし、逆にマイナーな視点でしか見られないであろうことへの反骨精神のようにも見えた。最後が照れ隠し?的な終わり方をするわけだが、オッサン監督の撮影視点映画が、まだ若さあるモチベーションで覚悟を決めるジュブさを誇るのだがら個人的には、白石晃士バースの観測者としてニンマリできる映画だった。