河豚川ポンズ

MEN 同じ顔の男たちの河豚川ポンズのネタバレレビュー・内容・結末

MEN 同じ顔の男たち(2022年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

監督の作家性と個性が大爆発した映画。
これがアレックス・ガーランドの本気か…遠いな…

夫ジェームズ(パーパ・エッシードゥ)の投身自殺を目撃してしまったハーパー(ジェシー・バックリー)は、療養のために田舎町のカントリーハウスを訪れる。
閑静な田舎町に、雄大な自然、それらに囲まれた豪華なカントリーハウスを管理人のジェフリー(ロリー・キニア)に案内してもらい、束の間の休息にハーパーは胸を躍らせる。
翌日、ハーパーはジェフリーに勧められた通り、森に散歩へ向かう。
静かな大自然を満喫していた彼女だったが、ある1本のトンネルの向こうからこちらに向かってくる怪しい人影を見つける。
問いかけに答えることもなく迫ってくるその影を不気味に感じたハーパーは慌ててカントリーハウスへと戻るのだったが…

いや、確かに言いたいこと、伝えたいことは何となく分かる、でもそれにしたって回りくどすぎやしない!?ってのが最初に思ったシンプルな感想。
監督のアレックス・ガーランドといえば「エクス・マキナ」「アナイアレイション -全滅領域-」の監督というからにしても、難しい映像表現が好みというのは自明の理なんだけど、今回はそれに輪をかけて難解。
同じ顔をした男たちに女性が狙われるというのは、正直観るまでもなく「有害な男らしさ」をコンテクストに含んでるんだろうなと思ってたし、実際直接的に言及されないにせよ、そういうテーマ。
ラストの下半身からのマトリョーシカみたいなシーンも、ミソジニーの再生産ということが言いたいのかなあとか何となく思いはしたけど、それを感情的な部分に訴えかけて批判するのはいかがなものか。
ミソジニーの連鎖によって主人公がホラー的に苛まれるとかなら、いくらか明示的だとは思うのだが。
そして全裸中年男性だけは最後までよく分からなかったし、たんぽぽ?の綿毛を吹きかけるシーンは本当に何だったのか分からない。
教会の彫刻に合ったケルト神話のグリーンマンというのが元ネタらしいが、それが分かったところで結局よく分からない。
今書きながら思ったけど、このミソジニーの連鎖は神話の時代から続いていると表現したかった…ってコト⁉
それならもうちょい明確に神霊の類だと劇中で言及してくれても良いでしょうに。

「グリーン・ナイト」でも思ったけど、A24スタジオの映画は映像美を強く意識したものが多いように感じていて、この映画でも印象的な画作りが多かった。
特に前半までの森の中を進むシーンは非現実性や神秘的な雰囲気を直感的な感じさせられる。
一応終盤にかけてのシーンも前衛芸術のような趣があることは確か。
そもそもアレックス・ガーランド監督自体がA24と相性がいいのか、これまでの2作もイケイケにキマったシーンが多かったので、今回もそこは外さない。
あと、タイトルにもある通り、ジェームズ以外の男性は全員ロリー・キニアの顔になっている…はずなんだけど、明らかに同じ顔だと分かるものもあれば、キャスト表を見て本当にロリー・キニア一人だったの?と思ってしまう。
バーのマスターとか警察官とか完全に別人だと思ってた。
そういえばこれってハーパーからは彼らの顔はどういう風に見えてるんだろうか。
劇中では同じ顔だということに言及することは無かったように思うし、漫画のキャラクターの髪色がアイコン的に奇抜な色となっているように、あえてミソジニーに囚われた男性たちということを画一的に表現したかったのだろうか。
何やかんや言ってもこういう想像の余地を残してくれるアレックス・ガーランドの作品は大好きなので、先生の次回作にもこうご期待!ですね。