河豚川ポンズ

チケット・トゥ・パラダイスの河豚川ポンズのレビュー・感想・評価

3.9
思ってたより無難に面白かった映画。
卒業旅行に行った娘が現地から結婚報告してきた、ってさすがにどんな親も初手から受け入れるのは無理でしょ。

20年前に離婚したデヴィッド・コットン(ジョージ・クルーニー)とジョージア(ジュリア・ロバーツ)は、一人娘のリリー(ケイトリン・デヴァー)を溺愛している以外の共通点は全くなく、顔を合わせればいつもいがみ合ってばかり。
リリーのロースクールの卒業式でも、隣同士の席に座らされ口喧嘩ばかりしていた。
卒業式は滞りなく終わり、弁護士になるまでの数か月間の卒業旅行としてリリーはバリ島へと出かけた。
2人はもうこれ以上顔を合わせることもないだろうと思っていたその1か月後、リリーからバリ島で知り合ったグデ(マキシム・ブティエ)と結婚するという衝撃的なメールが届く。
突然の報告に加え、結婚にいい思い出が無いデヴィッドとジョージアはリリーの結婚を阻止するため、急いでバリ島へ向かうのだった。

よくある中年の危機的な話なのかなあとか思ってたけど少し違った。
確かに子供が独立して中年になって自分の人生を見つめ直して的なところは同じだけど、その過程においてデヴィッドとジョージアの間に明確に溝がある。
といっても、相手の嫌のところが目について気になってしょうがなくて、と言うより学生結婚してしまったがゆえに自分たちの中で優先するものが共有しきれず、考えのすれ違いが起こって耐えられなくなったという方が大きそう。
まさに、デヴィッドは楽しみは先延ばし、ジョージアは先取りしたいという考え方に現れているだろう。
その2人を唯一繋ぎ止めていたのが娘のリリーだったということで、邦画なら離婚せずにダラダラしたい続いて、55歳ぐらいで熟年離婚する話になりそうな感じ。
でも安直に相手に惚れ直した!みたいな展開ではなく、娘の結婚を通して今までの間違いを認めあって、自分と相手にそれぞれ何が一番大切で必要かを理解し合い、それを相手と共有して尊重するという結論に持ってくるところが良い。
ロマコメだからコメディ要素が多いことに越したことはないけど、しっかりと締めるとこはきっちり締めて来るのは好印象。
ラストもこれまでのストーリーを踏まえた上で、納得感のある爽やかなEDで結構好き。

主演のジョージ・クルーニーとジュリア・ロバーツの2人舞台って感じで、2人の共演・製作は「オーシャンズ」シリーズ以来とのことだけど、あの映画ももう20年以上経ってるのかという事実に、時の流れはあまりにも残酷すぎて気が遠くなった。
リリー役のケイトリン・デヴァーも「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」の主演と聞いて、ああ、あの娘か!となったし、主演2人に全然負けてない。
あと、レン役のビリー・ロードはキャリー・フィッシャーの娘なのね。
何というかいいキャラクターしてて、とても印象に残ってた。

2022年ぶっちぎりの名作とまでは言わないけれど、ハリウッド大作とか大型シリーズもの、名作リメイクが乱立する今みたいな状況でも、やっぱりこういうポジションの映画があるのは大切よね。
出来ればこういう映画ほど、1日2回でも良いからちょうどいい時間で観られる映画館って大事だなあとしみじみ感じた。