河豚川ポンズ

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホームの河豚川ポンズのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

ファンサービスがうますぎる映画。
あんなこと良いな、出来たら良いなを真面目に全部叶えてくれるスタンス、嫌いじゃないよ。

前作「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」のラスト、ミステリオ(ジェイク・ギレンホール)の告発によって世界中に正体を明かされてしまったスパイダーマンことピーター・パーカー(トム・ホランド)。
正義のヒーローとして偽っていたミステリオの殺害容疑をかけられたピーターは、メイおばさん(マリサ・トメイ)、親友のネッド(ジェイコブ・バタロン)、恋人のMJ(ゼンデイヤ)とともに警察の取り調べを受けることになる。
盲目の弁護士マット・マードック(チャーリー・コックス)のおかげで殺人容疑は不起訴になったものの、周囲の目は一変しこれまで通りの生活を送ることは難しくなっていた。
加えて、ピーターだけでなくネッドとMJのMIT進学にも影響が出てしまい、ピーターは責任を感じる。
最後の手段に出たピーターは“至高の魔術師”ことドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)を頼ることにする。
ストレンジがピーターに提案したのは、世界中の人々の記憶からピーターの正体を消すというものだった。
あまりにも極端すぎる内容にピーターは呪文詠唱中のストレンジを止めてしまい、呪文に失敗する。
ストレンジはそもそもピーター自身がMITへの交渉などの努力をしていないことを怒り、ピーターはMITの副学長へ直談判しに行くことになる。
高速道路上で副学長をピーターだったが、その瞬間謎のアームを装備した男に襲われるのだった。

正直何となくこうなりそうな予感はしてましたよ?
MCUで散々マルチバースの前振りしてるし、実際次のドクター・ストレンジの映画のタイトルは「ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス」だし、予告に思いっきりドクター・オクトパス出てきてるし、こんなん歴代スパイダーマン大集合するしかないやん。
でも、権利関係はややこしいし、トビー・マグワイアは最近俳優活動から離れて製作側メインだし、アンドリュー・ガーフィールドはインタビューで出てないの一点張りだしで、一体何が本当なのか、何も信じられなくなって、本国公開から3週間地獄のような想いをしながらネタバレの恐怖に怯えて過ごしてた。
そんなこんなで迎えた公開日、どう考えても必要以上に期待値が上がってしまってたけど、
もはや杞憂でしかなかった。
予告の時点でヴィラン全員集合なのは想像できてたけど、しっかり歴代スパイダーマンも集合するし、何よりマット・マードックが出てきた瞬間はあまりに予想外。
その瞬間は劇場全体が驚きでみんな少し声が漏れてたのが、ファン同士の一体感があって、これこそが劇場で観る良さだよなって感じ。

それだけキャラクター集めて何の話するのかというと、ピーターが一人前のヒーローとして独り立ちするまでの試練といった感じ。
「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」が、師事していたトニーがいなくなって、一人のヒーローとして立ち上がる決意をする立志編なら、今回は別アースのピーターに支えられながらヒーローとして完成する完結編。
そう思うと、ラストのグリーンゴブリンにグライダーを突き刺そうとしてピーター2が止めるというシーンは、「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」のラストでのキャップvsトニーを彷彿させるよね。
2人が犯した過ちを、ピーターはそばに仲間がいたからこそ踏みとどまれたという事実、そしてそれがキャップのシールドを模した像の上で行われるのはなかなかにエモい展開。
加えて、「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」でのジョン・ウォーカーがバトルスターを失って、フラッグ・スマッシャーズの一員を殺してしまうことと良い対比になって、ドラマへの理解も深まり一度で2度美味しい。
でも、ピーターの試練のためとはいえメイおばさんまで逝ってしまうのは、さすがにピーターの人生ハードモード過ぎないか?
「スパイダーマン:ホームカミング」の頃から監督のジョン・ワッツは子供を過酷な環境に追い込みがちと主張してきたけど、今回も一切の抜かりがない。
育ての親を失い、戦いを共にした親友たちとの繋がりも消え、見知らぬ環境で新生活を始める、往々にして新生活ってそういうものだけど、まさしく「No Way Home」、帰る場所は無い、不退転の決意がすごい。
次の三部作(なのか知らないけど)では、今度こそハッピーエンドを迎えてくれ…

この映画の偉いところは、ピーター1の物語だけでなく、ピーター2、ピーター3の物語の延長にあって、彼らのこれまでのストーリーに救いを与えている点。
ピーター2は親友の父であるグリーンゴブリンを殺してしまい、さらにはその親友自身を戦いによって失ってしまったという過去を悔やみ、ゴブリンを殺させないという形でそれを叶えさせる。
ピーター3は戦いの中で恋人を失い、自分に憧れてくれたエレクトロを救えなかったことを、自分は理解者であるということを直接本人に伝えさせることで救う。
個人的には特にピーター3周りの話が好きで、特にMJを助けるシーンが「アメイジング・スパイダーマン2」のグウェンを助けられなかったシーンのオマージュなところ。
グウェンを失ってボロボロだったところで「今度は間に合った」というピーター2の涙にこっちは大号泣。
これこそアメイジング・スパイダーマン3なりで回収する話じゃないですか?
疑似的にでもそれが見られたのは、いまだに「アメイジング・スパイダーマン2」を名作と信じて疑わない自分としては、ジョン・ワッツとアンドリュー・ガーフィールドに五体投地で感謝をささげます。

これから先、MCU中心で広がっていくのか、それともソニー中心で独自で広げていくのか分からないけど、とにかくピーターにはたくさん新しい仲間が出来て幸せになってほしいという想いでいっぱいです…