河豚川ポンズ

THE BATMAN-ザ・バットマンーの河豚川ポンズのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

探偵、そして恐怖の象徴としてのバットマンな映画。
Twitterとかでよく見る「孤独のグルメ」の「こういうのでいいんだよ、こういうので」の画像みたいな気持ちになってた。

ハロウィンに沸くゴッサムシティ。
喧騒に紛れて、夜の街には強盗・暴行などの犯罪が蔓延る。
そんな街の暗闇に潜み、バットマンことブルース・ウェイン(ロバート・パティンソン)は今日も犯罪者たちを監視し、彼らにとっての恐怖の象徴だった。
そこにゴッサム市警のジェームズ・ゴードン警部補(ジェフリー・ライト)から、事件現場への呼び出しがかかる。
現場には、後頭部を鈍器で殴られた現市長のドン・ミッチェル(ルパート・ペンリー=ジョーンズ)の遺体があった。
頭部はテープで覆われており、顔には「嘘はたくさんだ」と血で書かれており、バットマンへと宛てた手紙も残されていた。
手紙には「死んだ噓つきがつくのは?」というなぞなぞ、そしてバットマンはその答えを「動かぬ嘘」だと看破して見せる。
しかし警察からは関与を疑われるバットマンは、突如現れたこの殺人鬼の正体を求めて捜査を始めるのだった。

バットマンというヒーローに対して、どういうイメージを思い浮かべるか。
「バットマン(1989)」みたいなオーソドックスな二面性ヒーロー、「ダークナイト」みたいなダークヒーロー、「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」みたいなゴリラじみたマッシブで容赦ないヴィジランテとか、映画だけに絞っても結構色々ある。
でも、原作のバットマンには「世界最高の探偵」という肩書、異名があって、これまでの映画でそこに大きく焦点を当てたものは少ない。
監督のマット・リーヴスは“バットマン=探偵”という原点に回帰するとインタビューで答えており、今までと違うアプローチながらまさしく原作準拠といったバットマン像だ。
今回のヴィランであるリドラーについても、「バットマン フォーエヴァー」での姿のようなコミカルなものではなく、「セブン」や「ゾディアック」のようなサスペンスミステリーの中でのシリアルキラーに近い。
街の雰囲気が重苦しくて、よく雨が降っているのも「セブン」にかなり近い。
それにプラスして今回のバットマンは活動2年目、原作にも「バットマン:イヤーワン」「バットマン:イヤーツー」というシリーズがあり、その要素が加わっている。
劇中でのブルースは未熟とも言える状態で、ファルコーネの言葉に動揺したり、バットスーツでの滑空に失敗したりと、精神面でもスキル面でもまだまだの様子。
そこにバットマンというヒーローとしての在り方、恐怖で犯罪者を牽制するのではなく、人々の前に立ち希望へと導く、というアイデンティティの変遷を描いていくのは、オリジンではなくイヤーツーだからこそ出来る話だと思う。
もう続編の製作が決まっているけど、ラストのジョーカーはもちろん、ロバート・パティンソンがインタビューで語っていた梟の法廷も個人的にはぜひ出てきてほしい。
バックボーンも今回の映画の内容とリンクする部分も多いし、絶対向いていると思うんですけどね。

「ダークナイト」でのヒース・レジャーは文句なしの怪演であり、同作の大きな見どころの一つだけど、本作で言えばそれはリドラーを演じるポール・ダノ。
前述のジム・キャリーが演じたリドラーは作風もあってコミカルなキャラクターだったが、今作は現代版にアップデート。
本人のIQが高いのはもちろん、SNSでの集合知で犯罪を計画するとかは現代の知能犯らしい。
しかもフォロワー数500人ぐらいという妙なリアリティと説得力。
確かにあれにフォロワー数万人もいたらちょっと嫌やな…
それはそれとして、初めてバットマンと対面した時も、完全に理解の及ばないヤバいやつという感想しかなかった。
ポール・ダノの映画って真面目に「スイス・アーミー・マン」ぐらいしか出てこないけど、一から追っかけようかなという気になった。
もちろん主演のロバート・パティンソンも負けてないけど、その演技力の凄さは「ロスト・シティZ 失われた黄金都市」「TENET テネット」でよく分かっているので、今回はその分驚きが勝った印象。
何にせよ、素晴らしい俳優に気付けることは良いこと。

他にもこの映画のお気に入りポイントとなると、キリがない。
宗教画のごとくシーンが決まっていたり、劇伴にニルヴァーナ使っているとこだったり、これ以上書くと数少ない友達がさらに離れていきそうなのでこれぐらいにしておきますか。
今年は半年も経たないうちにベスト級のがバンバン出てきて、今から年末が心配だな…