おさるのじょじへい

ICE ふたりのプログラムのおさるのじょじへいのレビュー・感想・評価

ICE ふたりのプログラム(2018年製作の映画)
3.5
以前に鑑賞したロシア映画がミニシアター系の作品だったため、ロシアもヨーロッパ寄りの作品が多いのかと思っていましたが、実にハリウッドテイストだった今作。
佳品かと問われたならば素直に頷けませんが、フィギュアファンとしては、興味津々の内容でした。

まずはロシアのフィギュア養成が、自分の想像と一致したこと。フィクションだから多少は誇張された演出であると察しますが、スパルタ教育やチームメイトとの不穏な関係。
テレビ越しでしかありませんが、実際のロシア選手を見て思い描いていた裏事情が、そのまま映画化されたような感覚です。そりゃフィジカルは強くはなるけど、演技が機械的なわけだよなぁ…と。

ちなみにイリーナコーチがタラソワさんに見えたのは、わたしだけではないことでしょう(笑)。
イリーナが終盤に放った「”私の娘”」発言には、コーチと選手の強いつながりを感じてほろりとなりました。これが細身で金髪ソバージュの女性コーチ像だったら、愛情面は描かれなかったかもしれませんね。



さて、作品の感想とは全く観点が逸れますが…。

今作のレビューをするにあたり、多くの方々がロシア作品を鑑賞したことを非難されないように、「映画に罪はない」などの”弁明文”を綴っています。というよりは、書かざるを得ない気持ちにさせられているのでしょう。
これらを読み、戦争の功罪というものはこんなところまで影響するのかと悲しくなりました。
かく言うわたしも、今作の監督や主要キャストがプー●ン支持者だったならば、鑑賞はやめようと考えていました。しかし自分なりに調べてもそれが判明しなかったうえに、紛争が始まる前から見たいと思っていた作品だったため、劇場に足を運んだのです。
本当に、作品自体に罪はない!むしろ、紛争前から上映権を買っていた配給会社やもともと上映予定だった映画館は、まともな告知をすることもできなくなり、大きな損害を受けたはずです。本国ではすでに公開済みの続編の日本上映は、このままでは不可能でしょう。

戦争で得をする人なんて誰もいない。苦しみと悲しみを刻むだけ。早くあの戦争が終わるよう、願うばかりです。