おさるのじょじへい

枯れ葉のおさるのじょじへいのレビュー・感想・評価

枯れ葉(2023年製作の映画)
4.0
雪深い故郷で暮らしていた時。秋の終わりごろになると、えも言われぬ切なさに襲われ、『枯れ葉』のメロディが何度も頭の中を流れたものです。
やはりあの曲は、寒い地域が似合います。雪が降り出す前の物悲し気な街に。そう、フィンランドにも。


前置きはさておき。
久々の新作も、いかにもカウリスマキ節といった味わいでした。
一方で、執拗とも感じられるほどウクライナ侵攻に触れる場面があったのが印象的です。監督が引退撤回をしたのは、これを伝えたかったからではないかと推測しました。
「ひどい戦争!」
まさにその通りですね。

大手の商業映画だったなら、鑑賞者の熱も冷めてしまいそうな終盤の展開にも関わらず、感動や心地よさをもたらすのは、カウリスマキ監督ならではのリアルな人間模様が綴られているからでしょう。職を失っても腐らずに新しい仕事を探し、汗水たらして働く庶民の逞しさや、ダメな自分から変わろうとする強さが生々しく描かれているから。
これまた監督の定番ですが、無償のやさしさをくれる人も必ず登場して…。だからこそ順風満帆とは言えない人生の、ささやかな喜びやつつましい生活の中での美しさが、人々の心に強く訴えるのだと思います。
ああ、わたしも恋がしたくなりました。

今作にも、『竹田の子守歌』や寿司のマドラーなど、監督の日本への愛が見受けられました。それに応えるかのように、いつもより観客の多い劇場。
監督、両想いですよ!