おさるのじょじへい

時計じかけのオレンジのおさるのじょじへいのレビュー・感想・評価

時計じかけのオレンジ(1971年製作の映画)
3.8
様々な映画監督が今作に影響を受けたと聞いたので、これは観ておかなくては!と思っていた一本です。
内容は全く知らなかったので、タイトルの雰囲気からして、タイムトリップ系の青春ファンタジーだと勝手に思い込んでいたのですが、ジャケットを手にした時から不穏な気配が…。おそらく苦手なジャンルだろうと想像はついたものの、借りちゃったしなぁと言い聞かせて、鑑賞することに。

美術面やクラシック音楽の使い方が鮮烈でした。ポエムのようなセリフも麗しい。2024年現在でもそう思えるのですから、公開当時はいかに衝撃的だったことでしょう。他の監督が今作と似たような演出をしたのならば、どんなにいい映画だとしても二番煎じに貶めてしまう。それほど唯一無二の作品かもしれませんね。

その代わりに、美的感覚が優れている分、強姦シーンさえどこか美しく華やかに描かれている点が、受け入れがたかったです。男性ならこういう演出に抵抗が無く、むしろ魅かれてしまうのかな…。

個人的な感覚として、凶悪な人物が登場する場合、ただその凶暴さを描くのではなく、何故そんな人物像になったのかを綴ってほしいと感じています。なかなかそれらが判明しなくてモヤモヤとしましたが、アレックスの服役中・後の両親の生きざまを見て、あのモンスターを生み出したのは彼らだったのだと納得しました。
結局は、人が働かなくなり、無駄に科学が進めば社会は荒廃する。そうなったら人間はどうなってしまうのかという風刺が、非常に強烈なインパクトを残しました。

登場する人ほとんどがぶっ飛んでいて、心のよりどころも無く鑑賞しましたが、まともな感性を持ち合わせていたのは、意外にもホームレスの老人だったのかもしれません。
「何という時代だ。月へ行く人間と地球を回る人間。だけど地上の法と秩序にゃみんなが無関心だ」と嘆いていましたから。