おさるのじょじへい

怪物のおさるのじょじへいのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.1
なんと、みずみずしい。
生きていくためには通らなければならない、多感な時期の心の揺れ。
少年2人の戸惑いと純粋さが手に取るように伝わってきて、同調する気持ちと、大人として彼らを抱きしめたい感情どちらもが溢れ出ました。

本当の主役は、少年2人なのでしょうね。
主演は安藤さんですが、彼女もそれを感じ取って演技をしているように映りました。

人の感情とは、勝手なものだと強く実感しました。
最初に鑑賞していた時は、湊くんの母寄りの目線になったのですが、ストーリーを理解したうえでもう一度鑑賞したら、彼女がモンスターなんちゃらに見えなくも無く…。(勿論、学校の対応に何よりの原因がありますが)
事実は一つしか無くとも、感情的な真実はそれぞれにあるという言葉を聞いたことがありますが、まさにそのことだと受け止めました。
物事は広い視野で見ないといけないですね。(こんな月並みな感想しか出てこない自分が情けないっ)

”怪物だ~れだ”のフレーズは、自分が想像していた猟奇的なものではありませんでした。
実際は少年2人を繋ぐための合言葉だったのだと知り、むしろ心が温くなったものです。
しかしながら、今の家庭環境では、依里くんは本物の怪物になってしまうかもしれない。どうにか彼を救う手立てはないものかと、真剣に願ってしまいました。


是枝作品はどれも、BGMが流れていることを忘れるくらいに自然で、書下ろしの曲ではなくても音楽とストーリーが見事に一体化していると感じます。今回も気付けばピアノのメロディ。すぅっと本編と調和していて、本当に心地よかったです。
先日坂本龍一さんの特集番組にて、劇中で使われている『Aqua』が紹介されていました。
あの旋律を聴いて、もう一度今作を観たい感情が猛烈に心の中を駆け巡りました。