おさるのじょじへい

ジェーンとシャルロットのおさるのじょじへいのレビュー・感想・評価

ジェーンとシャルロット(2021年製作の映画)
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作品の冒頭がコンサート開演時のシーンだったため、実際に会場にいる錯覚を起こして、気持ちが高揚しました。ところがすぐに我に返ると、もうジェーンがステージに立つこともないと気付き、涙があふれてきてしまい…。帰りの電車でも涙が出ちゃって、困ったもんです。
ずっと楽しみにしていた作品が、まさか追悼の想いで観ることになるなんて(涙)。

母と娘の確執というものは、多くの親子に見受けられますが、直接それに向き合うことは容易いことではありません。カメラというフィルターを通し、傍観者がいる形ならば、取り掛かりやすい。こんな向き合い方ができるのは、文化人の特権ですね。

シャルロットは、ママに愛されているという確証が欲しかったんだなぁ。ただそれだけなんだなぁと。
タイトルにも自身の名前を冠しているし、監督だけではなく出演もしているけど、あくまでジェーンを主役にしたいのだと感じました。
ジェーンの遺伝子がシャルロットに紡がれていると、しみじみと感じる場面が何度もありました。
2人が並んだ時に、やはり顔が似ていると思いましたし、どちらの声なのかが判別できない時も。飾り気のないルックスで、それがすこぶるお洒落だという点も、本当にそっくり。
でもそれらはシャルロットにしてみれば、外面的な親子の要素でしかなく、やはり心の繋がりを欲していたのですね。ママを失った現在の彼女が心配です…。

世界中の幾千の人々の憧れの存在だったジェーン。
逞しくて、明るい人だと思っていたけど、それはまさにパブリックイメージで、自分にはそうとしか映っていませんでした。もちろん、遠い異国の一握りのファンでしかないので仕方がないのですが…。
ジェーンが常に劣等感と不安を抱き、若い頃から睡眠薬に頼っていたなんて、思いもしませんでした。特にケイトの夭逝で、激しい心の傷を負ったのだと。
以前に鑑賞したジェーンのドキュメンタリーは、ケイトが亡くなる前の作品だったため、今作とは全く違う印象を受けました。それこそ、彼女の強さや真っすぐさなどが見て取れて、今作とは覇気が違ったのです。
子どもを亡くした親の苦しみの大きさを、大好きなジェーンという人物を通して痛感しました。つらい晩年だったでしょうね…。

それでもジェーンが、ファンや困っている人々に対して優しかったということは、紛れもない真実です。ジェーンに憧れたひとりの人間として、わたしはそのことを一生忘れません。

公開中の間に何とか時間をつくって、もう一度ジェーンとシャルロットに会いにいこう。


   *JB*CG*JB*CG*JB*CG*JB*CG*

2回目の鑑賞をし、追記を。

時間を重ねるごとに、2人のわだかまりが少しずつ解けていったように感じます。

シャルロットは優しい性格ゆえに、ずっと気を遣って生きていたのだと伝わりました。本音も言えず、相手も拒めず。
だからこそジェーンにとって、”地図に無い土地”だったんですね。
思わずジェーンに抱きついたシャルロット。あの行為で、これまでの満たされなかった思いが、僅かでも解消できればよいな、と思いました(涙)。

ジェーンの紡ぎだす言葉が詩的で麗しい。だからこそ、セルジュの最大のパートナーだったのですね。
決して、プロデュースされているだけではなかったその才能を改めて知ることができました。

2人の声がとても心地よくて、鑑賞2度ともうとうとしてしまいました…。
そう、あの声が好きなんです、やはり。
ありがとう、わたしの永遠のミューズ、ジェーン・バーキン。