おさるのじょじへい

彼岸花のおさるのじょじへいのレビュー・感想・評価

彼岸花(1958年製作の映画)
3.9
ここ数年、年に1本は小津作品を観ています。
そうしているうちに、佐分利さん、中村さん、北さん、笠さん、and 高橋とよさんのカルテットが今でも健在で、どこかでばったりと会えるような気がしてきました。
みなさん著名な俳優ながら、市井の人に徹していた功績なのでしょう。

劇中で言われていたように、矛盾だらけで、一人でプンスカしている父。娘たちの方がごもっともな発言をしているのに、頑固で譲れない父親像が滑稽でした。いかにも“昭和オヤジ”。自分事ならばうんざりするところですが、外野から眺めるだけなら、実に楽しい光景です。

一番印象に残ったのは、妻の清子が平山の背広をバサッと放る場面。頑固旦那にたまりかねて、募ったイライラをぶつけるシーンです。あの仕草一つで、清子の鬱憤がひしひしと伝わりました。爽快でしたねぇ。

画面の至るところに、赤や朱の差し色が施されていました。小津作品では初のカラー映像だったそうで、見事に配色も美しく、赤い色がまさに映像のアクセントになっていると感じていたのですが、エンドタイトルが表示され時に、呆気に取られたのです。
そうか、彼岸花か!やられましたっ~。名将に脱帽です。