おさるのじょじへい

首のおさるのじょじへいのレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
4.0
血みどろな描写がどうしても苦手で、北野作品には鑑賞が叶わないものが多々あります。でも時代劇ならば、ある程度耐性があるはず…と言い聞かせ、思いきって今作を劇場で鑑賞してみました。
やはり目を伏せずにはいられない場面もありましたが、人が武器によって命を落とすと言うことは、凄惨な様になるということ。あたり一面に散らばっているのは、遺体ではなくて死体。
悲しいけど、それが我が国が辿ってきた歴史だったと改めて思い知らされました。

「どうせお前、死ぬけどな」という秀吉の言葉が印象的でした。
武士の世は、常に死が隣り合わせ…。地位は高くとも、生きた心地がしなかったでしょうね。劇場から帰る際に、すれ違う人が敵に見えて、図らずも武士の疑似体験をした気分です。

歴史に疎いうえに、まだ一度しか鑑賞していないので、細かな史実については把握しきれませんでした。でもそれをすっ飛ばしてでも、ストーリーに熱中!
でも歴史に詳しい人なら、新解釈とも呼べる今作をより楽しめることでしょう。
なんて言いながら、帰宅してから「本能寺の変」周辺のあらましをもう一度確認してみました。面白い映画に触れた時は、内容について追い求めてみたくなるものです。


「首」という言葉から、命、刹那などの意味を感じる一方で、野望、虚勢、私欲、犠牲、過ちという意味も含まれているように思いました。
ラストはまさに後者の言葉達を ”一蹴”。ああ、なんと皮肉なものか。

命の儚さにおいては、過去も現在も同じ。
近年の大きな紛争が始まる前に撮影は終わっていたと記憶していますが、戦争へのアンチテーゼであるようにも写りました。