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雪之丞変化の小のレビュー・感想・評価

雪之丞変化(1963年製作の映画)
4.0
「午前十時の映画祭8」にて鑑賞。面白い。 江戸時代、歌舞伎役者の女形・雪之丞が、冤罪で陥れられ、あまりにも哀れな死を遂げた両親の仇討ちをする物語。要するにこれだけ。でも、その方法がスゴい。

雪之丞は剣の達人なのだけど、いざ尋常に勝負とかいって、かっこよくバッサリというのではない。

そんなことでは狂い死んだ両親の恨みは晴らせないとばかりに、策謀を弄して言葉巧みに相手を操り、精神的に追いつめて狂わせる。

とどめの一撃で、相手の精神は完全崩壊し、死に至る。雪之丞にしかできない必殺技で、これこそが彼の真骨頂。

いやー、凄いね。必殺仕事人もビックリ。現代でも完全犯罪になってしまいそう。多分似たような話はありそうだけど、自分は初めて。

こんなにも残忍な雪之丞にはちゃんと人間性も残って、仇討ちをする自分、直接は関係のない美女を巻き込んでしまうことに葛藤する人間ドラマにもなっている。

雪之丞演じる大スター、長谷川一夫の300本記念作品ということもあって、キャスト陣が豪華。雪之丞の計画を混乱させる女賊・お初に山本富士子、ヒロインの波路に若尾文子を配し、ほとんど本筋とは関係ないちょい役の昼太郎に市川雷蔵、島抜け法師に勝新太郎などなど。

実はどのくらい凄いか、よくわかっていないけど、後席の年輩カップルの男性が終わった直後「いやー凄い、よくこれだけ集めたねー」と感激を女性に熱く伝えていたくらい凄い。

監督もやはり大のつく市川崑監督。お芝居感強めの、笑いもある演出。殺陣のシーンで闇の中に光る刃。時代劇なのにバックの音楽にジャズを使ったりして、モダンな雰囲気を醸し出している。市川混監督作を初めて観たけれど、斬新。

でもね、長谷川一夫、いかに流し目の二枚目大スターだとしても55歳ですよ。美女がぞっこん惚れまくるというストーリーはさすがに無理が…。

ヤボは承知だけど、例えば『さらば あぶない刑事』で65歳前後のタカとユージを許容できるのって、2人の若いときを知っているオジサン世代くらいな
わけで。この映画の公開時、存在すらしていない自分にとっては…(以下、暴言になりそうなので省略)。

●物語:2.00(4.0×50%)
・こういう殺しのドラマシリーズ、あったら見たい。

●演技、演出:1.05(3.5×30%)
・長谷川一夫ありきなので仕方ないとは言え…。ちょっと笑える演出は好き。

●映像、音、音楽:0.90(4.5×20%)
・陰影くっきりの映像、モダンな音楽。自分的には良かった。
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