とりん

ミセス・ハリス、パリへ行くのとりんのレビュー・感想・評価

4.2
2022年99本目(映画館51本目)

ミセス・ハリスの生きる姿に元気も勇気ももらえる素敵な作品で、期待してた通りのかなり好きなタイプの作品でした。
夢を持つことや憧れを持つことへの素晴らしさを感じるし、彼女のように強くは生きられなくても前向きに生きよう、自分らしくあろうと思える。
素敵なドレスを買おうとお金を貯め奮闘するハリスが描かれている前半はドッグレースで賭け事をしたり、細かい仕事をコツコツしたり、見ていて楽しくコミカルな様子もある。後半はパリに行ってからのお話で、自分の立場を改めて思い知らされるところや変えようと動く若者たちの背中を後押ししたりする姿も見られたし、彼女自身の新たな出逢いの部分もよく描かれていた。
ハリスは一見ただの親切心たっぷりのお節介おばさんかもしれないけれど、こういうしっかりとした意見をいろんな方面に言えることはすばらしいし、多少土足で踏み込んだり、余計な一言かもしれないが、それがみんなを突き動かしていったと思う。そのくらいの人がいないと世界は回らないし、変わっていかないと思う。こういうカチッとした会社とかは特に頭固い保守派の人たち多いし。
全体のテンポ感も非常に良く、飽きずに観てられるし、彼女に勇気づけられ応援したくなる。
今よりももっと階級による身分の差が大きい時代だっただろうし、労働者階級、それも未亡人の家政婦が、超一流のブランドのドレスを買おうとするなんて、望む人も少ないだろうし、望んだとしても買おうと行動に移せる人なんてそうはいないはず。だからこそ彼女の夢に向かう姿に心打たれるし、そういった中で一生懸命生きてきた彼女の言葉だからこそ響くものがあるのだろう。
パリの街並みはもちろんだけれど、何よりもまずディオールのドレスの美しさは素晴らしかったなぁ。ハリスがドレスに魅了されるシーンも印象的に描かれていたけれど、あの気持ちは観ていても伝わる。そしてその素敵なドレスが自分のために仕立て上げられ、仕上がった時は鳥肌と同時にグッときたし、ため息も出そうなほど美しかった。これはスクリーンで観れて良かった。
ミセス・ハリス役のレスリー・マンビルの演技も良かったが、ディオールの執行員であるマダム・コルペール役のイザベル・ユペールの演技が特に良かったなぁ。彼女の出演作は結構不穏な作品が多かったけど、本作はこういうドラマなのでまた印象も違ったかな。
とりん

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