きまぐれ熊

オカルトの森へようこそ THE MOVIEのきまぐれ熊のレビュー・感想・評価

4.0

面白かった。
素直なホラーを期待してみる映画じゃないです。

Wowow様に制作された6話のドラマを映画に再編集したオカルトPOVアドベンチャー。
呪詛とか女神の継承とかの形式だけど、ライド型でコミカルなのでアトラクション性が強い。やたら強キャラが出てくるし絶望感はなくて冒険っぽさが強い。
ジャンルとしてはホラーではなくオカルト題材のコメディですね。

白石監督作品は「貞子VS伽耶子」しか見たことないけど、リアリティを詰める要素と、マンガみたいなケレン味重視のぶっ飛び要素がスイッチしていく印象は共通して感じる。


・POVと3人称のいいとこ取り
・漫画みたいな記号的キャラの立たせ方
・胡散臭さを冷静に面白がる価値観
あたりが個人的に良かったポイント

冒頭シークエンス以外はずっと白石監督視点のPOV形式で進行するんだけど、構図をしっかり意識したカメラワークと、広めに取った画角のお陰で、POV特有の散漫さや窮屈さがないのがいい。
3人称的な見やすさとPOVの没入感のいいとこ取りって感じ。


キャラクターの造形が特徴的で、変な奴とやばい奴しか出てこないのが面白い。
奇人変人にリアリティを持たせる手法が漫画的で興味深い。

性格を描写するエゴの出し方や台詞自体は質感があるのに、やってる事がケレン味重視でぶっ飛んでる。
反面、キャラの目的やモチベーションがめっちゃ記号的。
細部でリアリティを感じさせて、キャラ全体としては抽象的なテンプレ造形に収めてるあたりが漫画的で面白かった。
真面目にぶっ飛んだことやるのにマッチしてる。
割と序盤からゴリゴリ出てくる怪異表現のチープなCGも漫画っぽさや胡散臭さをむしろ強調してていい味になってる。


ケレン味のある濃い味付けの主人公パーティーの描写と比較して
後半で出てくるバスの運転手や、カルトにずっぽしハマっているおばちゃん達などの嫌な奴キャラの、あるある・いるいる感のディティールは冴え渡っていてめっちゃ質感ある。
リアリティのあるヤバい奴のヤバい言動を描写した結果、山奥で邪教を信じているカルト集団っていう漫画みたいな記号に落とし込まれるのが小バカにしている感じがあって超面白い。批判的な皮肉としてじゃなくってシンプルに面白がる感じがツボに刺さる人は多分全編楽しい。前半はずっと笑ってた。
ただ後半はおばちゃんの不快感がたまにフィクション突き抜けてて一瞬真顔になるシーンも多々ある。


最高!おすすめ!っていまいち言いきれないのは多分ドラマと映画どっちにも行ける様に作ってある制作過程にあると思う。

ドラマ版を見る手段がないので確認できてないのが残念だけど、あっちを立てればこっちが立たずなネックになってる気がする。

それが、ドラマ様ではクリフハンガーっぽい箇所が映画版ではサラッといっちゃう点と、映画用のシニカルなオチがドラマ版では消化不良を起こしそうな点。

山場が盛り盛りでテンポは良かったんだけど、ドラマ版のクリフハンガーで小気味良くぶつ切りにされた方がより見やすかっただろう事は想像できるし、
オチはホラーとしてもオカルト活劇としても甘すぎずシニカルでちょうどいい塩梅だったけど、連作ドラマでこのオチだとちょっと消化不良を感じそう。
キャラクターの関係性の変化は明らかにドラマの放送感覚を意識したもので、映画だとキャラ同士が急に距離詰まりすぎじゃねぇ?ってポイントもあるし。

あとシーンが飛ぶ明確な編集点がいくつかあって、何かの伏線か?と思ってたら、
結局何も無かったので、これがドラマ版からカットしたシーンなんだろうと思われる。縫合後は見せない様に上手くやってほしかった。これだけが明確なマイナス点。



総合的にはヤバい人、ヤバいもの、オカルトを冷静に面白がれる人ならおすすめできるいい作品でした。
まあオカルトを面白がれる人自体が選ばれしものって気がするけど。
きまぐれ熊

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