きまぐれ熊

スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団のきまぐれ熊のレビュー・感想・評価

4.0
珍しく邦題の改変がキマってる例。
原題のvs the Worldってシンプソンズのコミック「Bart vs. the World」からのパロディらしいのでそりゃ外して正解だわ。そもそも世界とは戦ってないのだ。

”邪悪な元カレ軍団“がプロモーションによるタイトル誇張じゃなくて劇中マジでそう言ってるし。マジで邪悪な元カレ軍団が襲ってくる。
ストーリーはB級と括るには語弊があるレベルで不条理に振り切ったコメディで、設定的な辻褄合わせとかはなく、ほんとにネトフリにあるあらすじの通りの男らしいストーリー。7人の元カレが何故か襲ってくるので全員倒して彼女をゲットするぜ!っていうストーリー。

不条理さにオチを求めるとちょっと肩透かしを食らうけど、途中のかっ飛び演出でさすがにみんな諦めるでしょってくらい展開がぶっ飛んでる。
ハナからアクションを楽しむつもりでみると、テンポも良くてキャラも濃いので非常に軽快。それよりも恋愛コメディと青春に振り切った熱さに乗れるかが重要。

見どころはゲーム愛溢れるバトルアクションと多彩なパロディ。なんなら恋愛要素よりもゲーム愛の方がやや強めじゃないかってレベル。でもそれって不可分だよねっていう謎のグルーヴ感がある。
主軸はドットゲーなので、パックマンとソニックとゼルダの伝説は名指しで直接的な引用がかなり多めにある。ゼルダはどうしても使いたいので製作者から任天堂に手紙を送った逸話すらあるくらいだけど、使用箇所のポップさを見ればそれも納得の必然性。バトル演出は主に格闘ゲーム。そして負けた相手は点数とコインになるけどその現象に理屈を求めてはいけないのだ。

で、多分これ映画の方は無難にまとめるために設定幾つか捨ててるよね。
この映画のオチだとラモーナがスコットの脳内サブスペースを歩ける事にシナリオ上の必然性が薄いので、SF的な世界観の辻褄合わせが恐らく漫画の方ではあるんだろうけど、映画はシンプルに不条理な恋愛バトルとしてまとめてる。テイクスオフでその辺りが語られるのではないかと思っているので楽しみ。

とにかくテンポがよく、劇伴のボーカル曲のチョイスもハイセンスなので、頭使わずなんとなくテンション上げたい時に超おすすめ。
グランジとかガレージバンドが好きな人はそれだけでもエモーショナルな部分に刺さる要素がある。

追記:アニメ「テイクスオフ」観た。
傑作だった。アニメ気になってるならまずこちらの映画版を観た方がいいです。絶対に。
実写で合わないならまずノレないし、アニメを十分に味わうにはまずこちらの世界観を知っておかなければ見えない側面が多くあるので。アニメは再構成かつ実質続編でした。そしてアニメの出来は非常に良い!

俳優ネタが好きなら、かなり間を置いたのに映画とアニメでキャストが続投な事における逸話も知っておくと熱い。クリスエヴァンスのキャラはもはや出てくるだけでちょっと面白いレベル。
きまぐれ熊

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