きまぐれ熊

スタア誕生のきまぐれ熊のレビュー・感想・評価

スタア誕生(1954年製作の映画)
3.8
ジュディ・ガーランド版。
えっ...こういう話なの...?
タイトルから想像できるベクトルと大きく違うし、この内容でこのタイトルは残酷な視点だ。

俯瞰して書けば、スタアの誕生と没落を通して、芸能界の栄光と残酷さというテーマが描かれる。成り上がりのサクセスストーリーかと思ったらそれは一要素でしかなかったっていうのがタイトルとは違って意外なポイントだった。
めちゃリメイクされている作品で、中でもこのジュディ・ガーランド版の評価が高いのは彼女自身の経歴にオーバーラップさせている部分も大きいんだろう(もちろん歌声のパワーもすごい)。
この構図、どっかで見たな...と思ったらバードマンだ。落ち目の役者に対する宛書きはいっぱいあるけど、芸能界そのものでメタ的に見せる構図は(ネタバレになっちゃうから書かないけど、)明らかに引用と思われる要素がある。古い映画だからってネットには堂々とオチが書かれてるけど、超スポイラーなのでこの映画は観る前にネタバレを知るべき映画じゃない。

3時間あるバージョンは、公開当時カットされた30分近い尺を後ほど復元されたもの。急に静止画の紙芝居になるので、その歪みは鑑賞中明らかに分かる。復元箇所のうちミュージカルシーンは違和感がないんだけど、紙芝居シーンは結果から言うと蛇足感が強くて、公開当時からの歴史的な流れを無視すれば作品的には削って問題なかったシーンだと思う。

時代を感じるインターミッション(休憩時間)の暗転を挟んで始まる後半は、ドラマとしてもテンポが良くて、ミュージカルとしても良いシーンが多かった。
自分はミュージカルは歌う事に必然性のあるシーンで構成されているのが好み。なので、練習中の演目をエスターが夫にお披露目する夫婦のシーンはナチュラルに楽しそうで1番良かった。夫婦生活×ミュージカルっていう2大、人を選ぶ要素なのに自然体で嫌味さがない素敵なシーンだ。この映画は歌う事に必然的な理由が用意されているので、ミュージカルとしても評価を高くしたい。

映像的な古臭さは意外と感じなくて、違和感なく見れるんだけど、復元シーンの紙芝居や、シーンによって解像度やスクリーンサイズがバラけてる(しかもシナリオ上の必然性はない)ので没入感を削ぐのが玉に瑕。でも歌はいいです。歌詞もしっかりストーリーに溶け込んでいるので、楽しそうなミュージカルシーンとビターなシナリオのギャップがいい味付けになってる。
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