きまぐれ熊

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎のきまぐれ熊のレビュー・感想・評価

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)
4.5
結びの美しさが完璧。

なんか凄いって聞いてたのでエログロあるんだろうなと思ってたけど、グロががっつり攻めてたので大満足。エロも描写はないけど背景情報ではしっかり攻めてる。攻めすぎ。

金田一耕助オマージュで進むミリテリー的な構図で持たせつつ、にも関わらず謎解きに欲張らず物語がテンポよく進むので中弛みせず見やすかった。オカルト主軸であっても、序盤に提示される情報で割と結末まで読み解けるようになってるのもフェア。

とはいえ真骨頂は事件終結後の結びの美しさだと思う。
墓場鬼太郎の水木の設定を踏襲しつつ、6期鬼太郎の誕生まで違和感なく接合に成功してて、墓場鬼太郎冒頭部のオマージュも抜かりない。
予想外のガチンコアクション作画とか物語の運びだけでも結構満足してたんだけど、最後の10分で一気に満足感が上乗せされた。

目玉親父と水木のバディものと言ってもいい内容だけど、全体を通して見れば明確に水木を主人公とした物語になってる。
彼の戦争を通じた死生観が、
舞台である村の闇や、目玉親父・沙代との関わりによって変化していくさまを上手く描き切られているので、主人公の造形描写に無駄がない。魅力的に描くの割と難しそうな性格のキャラなのに凄いな。

水木の物語で拾いきれなかったキャラもエピローグで回収してくるしキャラは無駄なく作り込まれてるのがいい。

脚本の良さが一本ぶち抜けてるけど、アニメーションとしても非常に高品質。
お気に入りはゲゲ郎対鬼道衆のバトルシーン作画と、乙米のパイプ〇〇〇〇からの〇〇ポロリですね。ほんまにPG12でええんかいな。



以下ネタバレ感想&考察なので注意。



裏の家系図どうなってんだよ。
父親への執着具合から時麿も時貞に手篭めにされてた...?ただ単に他の寄る辺を持たされてなかっただけ...?

ほぼドンだった乙米が引き返せない事に説得力がありすぎる。
乙米と村長が蜜月だった事から、沙代が実の娘じゃないことは克典も知ってたんだろうか。娘に対してあまりにも感心なかったし。それにしては詰めが甘すぎるか...?いや、そういう性格かも...。
丙江がタガ外れてそうなのも、連れ戻されたのも、時貞がやったこと考えるとまあそうなっちゃうよねって感じだ。
時弥が病弱だったのも遺伝的なものっぽい。

業はいっぱいあるんだけど、龍賀家は長田意外大体時貞の被害者なので滅びる以外もうどうにもならんですなこれ。長田は乙女米を人質に取られてたのかなとか考えられるけど描写がないので妄想の域を出ないですな。
実際手を下したのは沙代だけど、村の代表である乙米がトリガー引いてるので集団自決みたいなもんすよ。結果的に沙代を逃してたら村は存続できてそうだったのが趣深い。

最初の列車に乗ってた乗客の親子は哭倉村の生贄だよね?字幕では咳してる生贄の役名が女の子だったので。なんなら丸ごと奴隷だったのかもしれん。嘘の求人とかで釣ってたんでしょうかね。

ギミックとしてはちゃんちゃんこ周りはかなり良かった。前振り効いてるのでここで出来るんだなって読めるのも良いし、墓場鬼太郎的結びに進むために水木が鬼太郎の母ちゃんにちゃんちゃんこ着せて記憶を失うのもセオリーの組み合わせが芸術的。

あと1番どうでもよさそうだった山田記者が現代パートの結びに使われるのも捨てキャラ無くていいすね。過去話における現代パートがただの語り部的になってない脚本は非常に好み。
戦争絡めたことも蛇足ではないのもいい。単なる思考停止な反戦ではないメッセージの込め方とか上質っすよね。

CV木内秀信もめちゃめちゃ良かった。もともと好きな声優なんだけど、弱いのに強くあろうとする一般人枠にとてもマッチしてたのでドンピシャだった。
異形だらけの中で化け物ぶち殺しまくるバイオヴィレッジにおけるイーサンとか、目にクマ作ってまで妖怪だらけの世界で成長していくのは戦国妖狐の真介みたいであったり、自分の好みのツボをつきまくる男主人公でしたわ。男のロマン詰まりまくり主人公。

声優で言えば沙代の種崎敦美は前情報ないといつも分からないの凄い。アーニャとフリーレンと沙代が同一人物って言われても脳が理解を拒む。
きまぐれ熊

きまぐれ熊