むぅ

MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらないのむぅのレビュー・感想・評価

4.1
【SATURDAYS/このタイムループ、あの乗客に気づかせないと終わらない】

平日、上りの始発。
乗客はいつも同じ顔ぶれ、席も指定席状態である。
ある朝、次の駅で降りるはずの人が爆睡していて起きそうにない。私含める"いつメン"3人の目があった。もちろん3人の脳内には同じ疑問が浮かんでいる。
(起こすべき?)
そこでおにぎりマンが席を立った。
「次ですよ!」
片手におにぎりを持ちながら声をかけるその姿は忘れられない。
毎朝毎朝、始発でおにぎりを食べる私の次の駅から乗ってくるおにぎりマン(もちろん私の心の中のあだ名、しかも奴は海苔しっとり派ゆえに車内により香り立つ)は、それ以降おにぎり様に改名された。
そしてオープンの準備をしながらその話をしようと思ってばんじゅうを開ける。開ける。開ける。
....金太郎飴?
開けても開けてもメイプルオートナッツスコーンが出てくる。
18個を183個発注というミラクル。納品書を確認しながら
「エンターキーの横って確かに3だわ」
と呟かざるを得なかった。
その3日後、爆睡事件の犯人が(てへっ、その節は)みたいな表情を浮かべる執行猶予を終えたようで真顔で降りていった直後、始発が止まった。
時間との戦いの朝番の遅刻は七つの大罪のうちの一つである。そこには発注ミスも含まれる(例:チョコやブルーベリーならともかくメイプルを183個とか)。
もちろん声をかけるのは勇気と愛に溢れるおにぎり様一択。
「降りる駅どこですか?タクシー相乗りしませんか?」
「しましょう!」
何故かおにぎり様じゃないもう1人の"いつメン"が立ち上がった。
そう、物語を大きく動かすのはいつも意外な人物だったりする。

というあの1週間なら、タイムループを繰り返しどこに根本原因があるのか追求してみてもいいかもしれない。
そう思ったところで気づく。
発注は納品の2日前。タイムループ1週間の初日があの日だとしたら、徒党を組みむせ返るような香りで攻撃してきたメイプルオートナッツスコーン183名との遭遇は避けられない。


というくだらない妄想をしながらの映画館の帰り道。
その時の職場が改装されていて驚いた。どうやらタイムループ中ではないらしい。
でもちょっとだけ甘ったるいメイプルの香りを思い出す。
時は流れる。


世界の1週間の延々ループ。
私のこの結局結構楽しい1週間とは比べものにならない過酷な1週間を繰り返す広告代理店のメンバーがそれに気づいた。
よりにもよって、そのループの原因は自分たちの上司な予感。
どうすれば!


面白かった。
1人また1人とタイムループに気づいていく様は、フラッシュモブの止まっていた人々がどんどんダンスに加わっていくような高揚感がある。
そのダンスに加わるタイミングが上申制というのが何ともまた。
仕事観や日常を踊りながら、それぞれの見せ場があるのが楽しい。
そしてダンスのフィナーレを迎えるためのきっかけ。
そのステップに、数々のタイムループ映画を参考にしているのも楽しい。


こうなりたいんだ、これを達成したいんだという夢(人生の)。
こんな事になっちゃったらどうする?!という夢(妄想の)。
起きた時は覚えていないのにふとした瞬間に思い出す夢(睡眠の)。

そんな夢に新たな分野が加わった。
叶えようと思ったらいつでも叶えられるけど、やらないけど、やりたいけど、やらない夢(マイブームの)。

「街中で目が合った人に"あのポーズ"をして、ニヤっとしてくれる人を探したい」

その勇気はない。
それにしても今年も残すところ2ヶ月。この1年成し遂げた事って何だろう。本当は昨日終わったのは8月で、私だけタイムトラベルしちゃってるのではというスーパーご都合主義な妄想が遮られた。

「ヤバいもう11月」
と言いながら足早に私を追い抜いて行った2人組の声。
11月は誰にも平等に来てる模様。
むぅ

むぅ