映画大好きそーやさん

ウィッシュの映画大好きそーやさんのネタバレレビュー・内容・結末

ウィッシュ(2023年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

願いを巡る、捻りの足りない原点回帰。
本作を一言で表すと、演出と美術の死んだ『竜とそばかすの姫』です。
兎にも角にも脚本の粗が目立ち、クライマックスにノイズを感じて盛り上がれず、オチにも肩透かしを食らって個人的には散々な作品でした。
100周年記念だからこそ、願いといったワードを直接使うようなストレートな物語にしたのかもしれませんが、これまでの工夫やアイデアに満ちた作品群を観ているとどうしても物足りなく、結局涙を流すほどの感動は得られませんでした。
願いの象徴たるスターも何でもありの、都合によるトリックスター要員でしかなく、物語に対する緊迫感を無くし、主人公であるアーシャへの共感も削ぐ(努力による成長を阻害する)存在、ひいては可愛いだけの害悪地球外生命体になっていました。
また、終盤のマグニフィコ王との対決シークエンスで願いを奪われてなお、人々は新たな願いをもつことができるという展開になったのは良かったのですが、その後にマグニフィコ王が保管していた願いを返してしまうのはどうなのかなと思う自分もいました。
作中、願いを預けた状態はどこか虚しさがあるなどとは語られていましたが、その虚しさを覆す、いつからでも願いをつくることによってその穴は埋められるのだという意味のマグニフィコ王への切り返し、アンサーだと解釈したので、どうにも納得がいきませんでした。
仲間も数人従えますが、あまり活躍の機会がなく、魅力的な面々に見えただけに勿体なく感じました。
唯一の天井を開けるシークエンスも、スターのせいでどうにも盛り上がりに欠けていましたね。
そして、最後にアーシャが折ってしまった魔法の杖を直してもらう場面で、最終的に魔法の杖を受け取ってしまったのも、脳内お花畑が過ぎるのではないかと感じてしまいました。
願いを叶えてあげることはいいことかもしれませんが、それで全員が幸せになれるなどということはありません。
マグニフィコ王は現実的な考えのもと、国益のある願いを叶えており、その行為は国を運営する上で必要不可欠な判断であったと思います。
それこそ国家が転覆してしまうような、危険な思想が実現、多くの人に伝播してしまえば、安全な国、平和な国ではいられなくなってしまいます。
本作において言えば、アーシャは国家転覆を成し遂げた極悪人であり、ただの頭お花畑の犯罪者です。
そんな存在が魔法を自由に使えてしまったら、恐怖以外に生じる感情はありません。
それをさも素晴らしいことのように描いている本作は大変危険であり、ディズニー作品としてはあるまじきことだと思います。
ただ一応作品としての展開があり、何より『竜とそばかすの姫』でも言えたような楽曲の良さがあったがために、この評価とさせて頂きました。
多くの皆さんが仰っているように、同時上映の『ワンス・アポン・ア・スタジオ 100年の思い出』の方が優れた作品でしたね!
長くなりましたが、以上です。
余談ですが、マグニフィコ王は好きでした。
吹き替えで観たので、福山雅治の軽快な歌声が聞けて最高でした!