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西部戦線異状なしのkuuのレビュー・感想・評価

西部戦線異状なし(2022年製作の映画)
4.5
『西部戦線異状なし』
原題 Im Westen nichts Neues.
製作年2022年。上映時間148分。
エーリヒ・マリア・レマルクによる1929年の同名小説を原作とした2022年のエピック・反戦映画。
1930年にアメリカで映画化され、1979年にTV版でもリメイクされているが、映画リメイクはNetflix配信が初だそうです。
エドワード・ベルガーが監督を務め、フェリックス・カマラー、アルブレヒト・シュッフ、ダニエル・ブリュール、ゼバスティアン・フールク、アーロン・ヒルマー、エディン・ハサノヴィッチ、デーヴィト・シュトリーゾフらが出演。
第一次世界大戦末期を舞台とし、理想に燃える若きドイツ人兵士のパウル・ボイメルを描いている。

仲間と共にドイツ軍に入隊したボイメルは戦争の現実を目の当たりにし、英雄になるという当初の希望を打ち砕かれながらも生き残るために最善を尽くす。
映画では原作小説にはない休戦交渉を描いたパラレルストーリーが追加されている。
舞台は第一次世界大戦の西部戦線。
ドイツ軍兵士パウルは仲間たちと祖国のために戦おうと意気揚々と戦地に赴くが、最前線の想像もできないような現実を目の前に、絶望と恐怖に落ちていく。。。

個人的にはNetflixの歴史の中で最も価値あるドイツ映画の一つかなぁなんて思います。
原作は二つの世界大戦と全体主義に翻弄される民衆を一貫して描き続けたドイツの小説家エーリッヒ・マリア・レマルク。
彼は第一次世界大戦のドイツ兵としての自らの体験をもとに書いた今作品原作は、戦闘の悲惨さ、戦闘中や戦闘後にも兵士が直面する問題をリアルに描いていることが特徴であると思う。
この物語は世界文学の古典に位置し傑作と個人的には思う。

今作品も然り。

史上最高の反戦映画の一つであり、人類の失敗を物語るものでしたし、観た後、ぬるま湯の中で生きる小生の心をボコボコに打ちのめしてくれました。

邦タイトル『西部戦線異状なし』は一次大戦の終戦が近づいた日、司令部報告に『西部戦線異状なし、報告すべき件なし』と記載された事に由来している。
兵士ひとりひとりの命なんか、国家の命運を賭けた戦争の前には無視しうるほど小さなものでやった。ちゅうことを隠喩して付けたタイトルと云えるかな。
個人的には少々違和感がある。

第一次世界大戦の前線における喪失、闘争、死について、時代を超えた物語が展開されてました。
ほぼ丸一世紀前の1929年に出版されて以来、エーリッヒ・マリア・レマルクの革命的な小説『Im Westen nichts Neues 』(1929年)は、3回に分けて実写化されてきて、最初は、出版からわずか2年後にルイス・マイルストーン監督がアカデミー賞を受賞した映画で、この初代実写化作品は、小説の言葉に書かれた痛みをまだ感じていた時代から描かれた、怒りと後悔の物語。

次にデルバート・マンが70年代後半に復活させてテレビ映画としてカラー映像でリメイクしたプロジェクトは、戦争への鋭い非難を維持しながらも、小説の登場人物にほのかな同情と理解を示している。

そして今作品は、エドワード・バーガーがNetflixで高予算で映画化したものです。
今、この世代を決定づけた戦争から100年を迎えようとしている今、ベルガーが執拗なまでの暴力と感情で『西部戦線のすべて』に挑んだ目的はただ一つ、戦争という概念を完全に解体し、その内在する欠陥をすべて暴き、人類が二度とこの致命的な過ちを繰り返さないようにするためってのがあるのじゃないかな。

この3作品にはそれぞれ長所と短所があるけど、最も魅力的な比較対象は、それぞれが微妙に異なる点。
同じ物語、同じ登場人物でありながら、第一次世界大戦とその悲劇的な結末に対する人類の理解が時代とともに徐々に変化していく様子は、これらの映画が互いに異なるさまざまな方法を通じて観察することができます。
もし、今作品に何かしら心動いたなら、機会があれば探して観るのも良いものじゃないでしょうか。

エーリヒ・マリア・レマルク原作の本と同様に、2022年の『西部戦線異状なし』は、熱狂的な若い兵士パウル・ベーメル(フェリックス・カンメラー)の物語です。
彼は、大戦の現実を直視することを強いられ、すぐに自分には限界があることに気付く。
今作品は、ドイツ軍でのパウルの旅路をほぼ独占的に追い、戦争がいかに早く人の人生を狂わせてしまうかを、耐え難いほど詳細に描き出してます。 
悲惨な物語であり、題材が過去のものであるにもかかわらず、現代にも通用する何かがあるように感じられる。
平和と団結がなければ、戦争は最終手段としてでなくとも、危険な第一手段として使われ続けるからかもしれない。
戦争ちゅうジャンルで、今作品ほどパワフルで残忍な作品が登場するのは久しぶり。
パンチを少しも効かせず、むしろ観てる側を第一次世界大戦の血まみれの塹壕に沈め、紛争の両側の兵士の経験を忠実に反映させようと懸命に努力している。
親密な撮影から傑出した演技まで、ベルガー監督の映画はあらゆる面で格別のリアルさを感じさせる。
物語を推し進める構成されたストーリーはなく、その事実は通常批判されるところやけど、乱雑なストーリー展開と予測不可能な進行をうまく利用し、スクリーンの中の兵士たちの混沌とした生活を模倣している巧みや。
ほとんど何も起こらない瞬間もあれば、これ以上何が起こるか想像もつかない瞬間もあり、最近の記憶では最も刺激的でゾクゾクする視聴体験のひとつとなってる。
また、一コマ一コマに、今作品の製作にどれだけの労力が費やされたかが感じられる。
余談ながら、先日、Netflixドラマ『Jimmy ~アホみたいなホンマの話~』で、主演をつとめた俳優 中尾明慶がNetflixの撮影での過酷さを赤裸々に話してるのを聞いたからなおさら。

撮影は『プライベート・ライアン』や『1917 命をかけた伝令』からインスピレーションを得てるようで、ダイナミックなカメラの動き、壮大な戦闘シーン、親密で感情的な瞬間を通して、兵士の人生に深く入り込み、物語を現実に根付かせることができてる。
主演の演技は、彼が登場するすべての瞬間に引きつけるのに十分やけど、このレベルの弱さと無防備さを大きなスクリーンで体験することは、このプロジェクトを工芸品の域を超えたものにするんは間違いない。
大きなスクリーンで見ることを懇願しているようなもので、この方法で体験できないという事実は、本当に残念なことです。
これほど価値のある映画はない。

ただ、この映画の素晴らしい技術と手に汗握るアクションシーンに比べ、静かで激しくないシーンは、しばしば刺激が弱く感じられることは否めない。
雰囲気が常に入れ替わるので、少し違和感を覚えるが、タイミングよく編集されてたし、これをうまくコントロールしているかな。

それ以外は批判すべき点はほとんどない。

小説を見事に映画化し、重要な部分はそのままに、自らの存在を正当化できるほどの鋭い変化を遂げていました。
歴史のこの部分の倫理的、道徳的な意味合いに本当に興味がある人なら、このNetflixの最新作で簡単に気に入るものを見つけられるだろうし、多くの人にとって、この作品は最高の戦争映画の1つとして語り継がれると思います。
観終わったときに言葉を失うような、驚くべき映画作りの成果かな。
実際、小生は鳥肌が立ちましたし、戦争がいかにトラウマになり、心身共に痛めつけるものであるかを、少年の物語で表現している今作品。
撮影とプロダクションデザインは、観る者を地獄としか思えない戦場に誘い込むと思います。

作中、
・ヨハン・セバスティアン・バッハのコラール前奏曲 『われ汝に呼ばわる、主イエス・キリストよ』(独:Ich ruf zu dir, Herr Jesu Christ)BWV639
・La Wally, Act I: Ebben? Ne andro lontana Maria Luigia Borsi
が流れ物語を深く盛り上げてました。

また、今作品で出てくるフランス戦車はサンシャモン突撃戦車て云うもので、1917年4月から1918年7月までの間に350から400両が生産された。
子供のときにプラモ作って全体をカモフラに塗って遊んでただけに感動は倍増されました。
サンシャモンドは重量23トン、理論最高速度7.5mph(実戦ではほとんど達成されなかった)、75mm重砲を装備。
塹壕越えの能力が低く、重い機首がしばしば泥沼化したため、操縦士から広く嫌われたそうです。戦争が終わるころには、ルノーFTに取って代わられ、ほとんど使われなくなってます。
現存するサン・シャモン1台は、アメリカのアバディーン性能試験場に生き残っていた一輛がフランス政府に寄贈され、ソミュール戦車博物館に展示されています。
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