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オールドピープルのkuuのレビュー・感想・評価

オールドピープル(2022年製作の映画)
3.0
『オールドピープル』
原題 Old People.
製作年 2022年。上映時間 101分。
: [Netflix作品]結婚式に参列するため子供たちを連れて帰郷した女性が、殺人鬼と化した老人ホームの入居者たちと死闘を繰り広げるホラー。
監督・脚本を務めたのは『アーバン・エクスプローラー』などのアンディ・フェッチャー。
メリカ・フォルタン、シュテファン・ルカのほか、アナ・ウンターバーガー、ビアンカ・ナヴラート、オットー・エミール・コッホ、マキシン・カシースらが出演する。

エラは妹の結婚式に参列するため子供たちを連れて帰郷するが、故郷の村は若者の姿が見当たらず、残っているのは老人ばかりですっかり変わり果てていた。
披露宴の夜、近所の老人ホームの入居者たちは会場から聞こえる音楽に耳を傾けていたが、やがて集団で若い介護士たちを襲撃。
その後施設を抜け出した老人たちは披露宴会場へと押し寄せ、エラたちに襲い掛かる。

今作品冒頭に、これから起こるであろう恐怖を先取りするような文言で始まる。
“In times of yore, an avenging spirit was thought to inhabit old people. A dark power that took possession of the frailest members of the clan. And drove them into a seemingly blind rage.”
かつて老人には復讐の魂が 宿ると考えられていた。邪悪な力が一家で最も弱い老人に取り憑き、盲目的な怒りへと いざなうのである。(Netflix日本語字幕より抜粋)

無知ゆえに聴いたことないが、これは単なる神話の類いやと思いますが、今作品の登場人物にとっては、その魂が地元の高齢者に取り憑いて、地域の人々に対して殺人的な暴挙に出ることで、暗い伝説が実現し始める。
しかし、なぜ怨霊が高齢者にそのような行動を起こさせるんやろ。
その答えは、家族の絆を断ち切り、年老いた親族を見捨てると呪いが解けることを警告する古代の石造物に関係している。
典型的なホラー映画の手法で、この予言はすぐに現実のものとなる。
物語に登場するドイツの小さな町の老人たちは、自分たちを世話するはずの人たちから無視されることに疲れ果て、霊魂に乗り移られる。
今作品の脚本と監督を担当したフェッチャーは、自分の行動を反省しなければならないのは彼女だけではなく、家族や地域のお年寄りに対する我々の態度を考えてほしいと思っているんかな。
我々は彼らを負担に思っているのか。
彼らのニーズや欲求を無視してはいないだろうか。
もし、高齢者に対して、家族であれ、他の誰かであれ、癇性になってしまったことがあるんなら、自分の態度を振り返り、それが相手にどのような印象を与えたかを考えてみてるのもエエ機会かな。
また、我々の街でケアハウスを運営している人たちも、入居しているお年寄りに何か悪さをしたのなら、自分たちで責任を取るのが妥当かな。
メディアで報道されているように、ケアハウスは人手不足で劣悪な環境にあるにもかかわらず、多くは懸命に優良を保つ努力はされてるとは思いますが、作中に描かれてるような老人ホームとはまるで違う。
こないな施設では、職員が入居者に非人道的な扱いをすることがあるため、フェッチャーのメッセージはそのような施設に向けられているんかな。
このことは、作中で、老人たちの反乱のリーダーが云う
『何が見える、人間か動物か、我々の短い人生の中で、我々が何を見てきたか、あなた方は知らない。動物のように生き続けるくらいなら、死んだほうがましだ』と。
フェッチャーの伝えようとするメッセージは評価できるし、今作品のプロットの中でそれを提起したことは賞賛されるべきやとは思う。
しかし、それを過剰にグロいホラー映画に織り込んでしまったため、彼のメッセージはしばしば損なわれている。
看護師が酸素ボンベで頭をドツかれるシーンや、老人たちが繰り広げる陰惨な暴力シーンに直面すると、高齢者に与えられている不公平について考えるのは難しい。
今作品は、個人的に思うんは、高齢者虐待について論じようとしたときにつまずいただけでなく、ホラーとしてもつまずいとるかな。
ドアから手や斧が飛び出す家宅侵入シーンは確かに不気味やけど、それ以外に緊張感を高める要素はあまりなかった。
ホラー耐性ある人ならジャンプスケアもないので、今作品に恐怖を期待しているとガッカリするかもしれません。
ホラー不適応の方なら十分肩慣らしになるんじゃないかな。
台詞も現実とチョイかけはなれ、登場人物の行動も必ずしも真実味を帯びているとは云えへんかな。
これらの問題に加えて、テーマが血みどろの恐怖のシーンとぎこちないこともあり、チョイとイラっとさせられた。
結局南極、今作品は機会を逸したちゅう感じかな。ホラー映画には、社会的な問題に関連するメッセージが込められているものが多いが、本作は、そのポイントを本当に伝えるだけの強力な脚本を持っていないのが残念でした。
ジョージ・A・ロメロが1970年代のシリーズ以外で製作した、社会がいかに高齢者を虐げているかということを表現している短編『アミューズメント・パーク』の方が期待できると知人が云ってたので機会があればそちらも見たいかな。
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