『魂の苦悩は絶望の高く長い最後の叫びとなってほとばしった』ポー
エドガー・アラン・ポーの小説『穴と振子』『早すぎた埋葬』の2作品から私の好きなリチャード・マシスンが脚本を書きロジャー・コーマンが監督した映画です。
幼い頃テレビ放送で観て(幼すぎて)内容は全く記憶にないのですが、巨大な斧のような振り子が男性の胸元で大きく振れながら徐々に体に近づいて、やがてシャツが切れて血が流れるシーンだけが記憶された恐怖映画です。
若い姉エリザベスの死亡連絡を受けたバーナードは英国からスペインに渡り、エリザベスの嫁ぎ先メディナ家の館に着きます。
執事のマクミリアンには約束のない訪問を断られたのですが、傷心の兄ニコラス(エリザベスの夫=バーナードの義兄)のために館に帰ってきた妹キャサリンに事情を話しやっと家に招かれました。
ニコラスはエリザベスは血の病で死んだと言い、主治医レオンはこの城の陰惨な妖気が命を奪ったと言います。
建物の地下室はニコラスの父の拷問室があり、ニコラスは幼いとき立入禁止のこの部屋に忍び込んだ日に、妻イザベラ(ニコラスの母親)の不貞に腹をたてた父親が浮気相手の弟バートロミィとイザベルを拷問死させるのを見てしまったのです。
深夜、エリザベスが弾いたとしか考えられないチェンバロの音がしたり、エリザベスの指環が音楽室で見つかったり、メイドがエリザベスの声を聞いたり不思議なことが次々と起こり、謎を解くため地下室に安置されたエリザベスの棺の蓋を開けると、もがき苦しんだエリザベスの遺体がありました。明らかに早すぎた埋葬だったのです。主治医レオンは死を確認したと主張するも、ニコラスは気を失ってしまいます。
その夜、エリザベスの声に誘われたニコラスは拷問室でエリザベスの亡霊に出合いショック死します。そこに駆けつけたレオンがこっそりと言います「まだ早いと言ったでしょう」・・・
エリザベスとレオンは不倫関係にあり、エリザベスは生きていたのです。二人はいずれニコラスを殺す計画だったのです。
エリザベスがニコラスの遺体に自分の不貞を誇ったように打ち明けていると、死んだはずのニコラスが突然目を覚まし「イザベラ、バートロミィこの部屋が気に入ったか」と笑いながら話しかけます。ニコラスは気がふれて、父親の人格になってしまったのです。そして捕まえたイザベラを小部屋に幽閉するとレオンを追い回し、レオンは誤って拷問室の階段から落ち死んでしまいます。そこにニコラスを探しに来た何も分からないバーナードが現れ、ニコラスに叩きつけられ気を失ってしまいます。狂気のニコラスにはバーナードもバートロミーなのです。
目が覚めるとバーナードは天井に吊り下げられた大きなナタのような振り子の下に仰向けに縛り付けられていました。
スイッチが入れられた振り子の斧はニコラスの手によってゴーゴーと音をたてて振れながら、少しずつ降下しはじめます。
そこにマクミリアンとキャサリンが駆けつけニコラスと格闘になりニコラスはレオンと同じ階段から墜落死します。
キャサリンはバーナードを助けるとマクミリアンに「ここは永遠に封鎖して」と頼んで3人は部屋を後にします。その会話を幽閉された部屋で手足を縛られ猿ぐつわきをされた状態で聞いていたエリザベスの愕然とした顔のショットで映画はおわります。
・あの棺の女性は誰だったのか。
・エリザベス本人が既に死んでいては遺産相続ができない。
・そこまで演出して夫を苦しめなければいけない理由は何か。
等々疑問が残る作品です。
残念なことに、幼い頃から頭にこびりついていたイメージとは、かけ離れた映像でした。
館の地下の空間がやたら大きく館一軒分の空間位ある不思議な建物に感じます。
コレクションから引っ張り出して50年振り位で観て「そうか、そういうお話だったのか」とわかっただけの映画です。期待が大きすぎました💧💧