ヨーク

ファイブ・デビルズのヨークのレビュー・感想・評価

ファイブ・デビルズ(2021年製作の映画)
3.8
多分これは中々に面白い映画でサスペンス・スリラーな面もありヒューマンドラマな面もありで見応えのある映画ではないかと思いますね。冒頭に多分、と付けているのはまぁ俺にとってはよくあることなんだけど今回結構観ながら寝てしまったのでぶっちゃけどういう映画かよく分かっていないところがあるんですよね。しかも今回は最近の中ではよく寝た方でおそらく35分くらいはウトウトしながら観ていたのではないだろうか。今確認したら本作『ファイブ・デビルズ』はランタイム96分とのことなので余裕で三分の一くらいは寝ているのである。そりゃまぁよく分からんよな。
いやでも面白かったですよ、この映画。おそらくちゃんと観ていた人とは全く違う感想になるのだろうが、なんせ始まって5分も経たない内に寝たから何が分からないってまず主要な登場人物の関係性とかさっぱり分からんのですよ。映画はまず火事のシーン(多分ポスターとかにも使われてるメインビジュアルのシーン)から始まって何か水泳教室? みたいな場面が映されたと思ったら今度は湖の上の道路を車が走るシーンになって、そこでもう寝たからね、俺。目が覚めてからは主役のボンバヘな少女ですら(お前誰だよ…)と思いながら観てたからな。一応前情報で匂いから過去の出来事を知るとかタイムスリップ的なことをするとか、そういうサイコメトリー的な超能力を持った女の子のお話というのは知っていたから最低限の設定は知っていたが、その事前知識が無ければマジでヤバかったかもしれん。
で、そんな状態で観た映画の何が面白かったのかというと主人公の少女の超能力しか手がかりがないまま観てたから上記したようにまず人間関係が分からない。多分、というかほぼ間違いなく映画の冒頭で主要人物たちの紹介シーン的なのがあったと思うんだがそこ観てないから主役の少女と今一緒にいる大人の男が誰なのかとかが分からない。何か懐いてる感じだから誘拐犯とかではないんだろうな、とかそんな感じで推理しながら観るわけだけど映画が終わる20分くらい前になってやっと登場人物たちの関係性がクリアになってそういうお話だったのか! ってなったのが面白かったですね。一応本作は過去のある事件を巡る結構ミステリ要素とかサスペンス風味がある作品なので(多分)、ちゃんと頭から観てたとしても終盤になってやっと明かされる真実みたいなのはあると思うんですよ(多分)。でも俺はそこでお話の核心だけでなく表層部分のところも同時に理解したわけで、これは驚きが二倍なわけですよ。具体的に言うと「お前主人公の親父だったのか!?」という驚きだったんだけど、きっとそれはちゃんと観てた客なら冒頭10数分くらいで知ることだよね。でも寝ながら観てた俺にとってはそこ凄い謎だったからめっちゃスッキリしたんですよ。おそらく謎でも何でもなかったと思うのだが…。
まぁそんな風に半覚醒のまま観ていたので映画の内容に関して言えることは何もないのだが、しかしこれは寝ていた言い訳ではないが本作は結構難解というか分かり辛い映画ではないのかなとは思いますよ。上記した冒頭の火事から水泳教室と湖上の道路のシーンとかも一見全然繫がりがないじゃないですか。ちゃんと起きてるときに観てたシーンも断片的なシーンが多くて実際に意図的に終盤になるまでこれがどういう映画なのか分かりにくく構成されているんじゃないかなという気はしましたね。多分本作の主役も少女とその母親のダブル主人公って感じだと思うのだが、子供の目線と大人の目線が行き来して、少女の超能力によってそこに過去の描写も入り込んできたりもするからお話の核心部分を捕らえにくいというのはあるんじゃないですかね。フランス映画だしその辺回りくどく描いてるんだよ、多分、きっと。
ジャンル的にもサスペンスのようでもありスリラーのようでもありファンタジーなようでもあり感動の家族ドラマという風情もあるという、非常に捉えどころのない感じはありましたね。匂いは記憶を強く想起させる、というのはよく言われますが本作のアイデアの核には匂いがあって、しかし匂いというのは目には見えないし中々に曖昧なものではないですか。そして人の記憶というのも曖昧なものである。そういう境界のないものを映画のジャンルも飛び越えてふわふわと描き出していくような、そんな不思議な感じの映画ではあったと思うしそこがすげぇ面白かったですね。
多分テーマとしては主人公の家族、特に娘と母親がそれぞれに自分と向き合ってちょうどいい感じの距離感を見つけるみたいなものがあると思うんだけど、家族の在り方だって家庭の数だけあるわけで不定形なふわふわとしたものなんですよ。でもまぁそれでいいんじゃないの? 無理して理想の家族になる必要はないんじゃないの? っていう感じのラストは匂いや記憶という曖昧さを扱った本作のオチとしては中々いいのではないだろうか。
いやなんかそれっぽい感想文を書いてるがぶっちゃけどういう映画かよく分かってないんですけどね! でも俺の経験上間違いなく言えるのは、いい映画は寝ながら観ても面白いから。この映画は寝ながら観ても面白かったのできっといい映画なのだと思いますよ。
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