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イヴの総ての小のレビュー・感想・評価

イヴの総て(1950年製作の映画)
4.3
「午前十時の映画祭8」で鑑賞。面白いわ~。地位も名誉もあるベテラン女優と実力派若手女優の虚実入り乱れた闘い。どちらの言い分も理解できる。俯瞰して見れば自然の流れというか世の中の新陳代謝みたいな話かな。

舞台女優として揺るぎない地位を築き上げたマーゴに、彼女に憧れているというイヴが近づいてくる。マーゴはイヴを気に入り、住み込みの秘書とする。しばらくは蜜月の関係だった2人だが、次第に本性を表し始めた若いイヴにマーゴは嫉妬し、警戒し始める。

要するにイヴがマーゴを利用してのし上がっていく話。イヴは腹黒い女性として描かれてるけれど、それが物語のおもしろさやラストの無常感的な余韻につながってくる。また、イヴをマーゴに紹介した脚本家の妻も物語の盛り上げに一役買っている。

マーゴからみたらイヴはとんでもない泥棒ネコ。うかつに信用した自分がバカだった、と。一方、イヴにしてみれば役者としての実力があっても、既得権にあぐらをかくベテランがいつまでもいては、若い時期に活躍できず一生浮かばれないではないか、これくらいやらなければ何も変わらないじゃないか、と。

イヴは階級闘争における革命の闘士のようにも思え、若い人なら、イヴの方に肩入れするだろうなあという気がする。そして革命と考えれば、犯罪的なイヴの行動も腑に落ちる。決して良いとは思わないけれど、芸能界ってこれくらいは当たり前なんじゃないの、とも妄想する。

物語はイヴが演劇界の栄えある賞を受賞するシーンから始まった後、8カ月前にさかのぼり「イヴの総て」が明かされた後、再び受賞シーンへと戻ってきてイヴがスピーチ。そして話はここで終わりではなく、含蓄あるラストシークエンスへと。

それはまさに盛者必衰、諸行無常、諸法無我。奢れる者は久しからず。ゆく河の流れは絶えずしてしかも、もとに水にあらず。

世の中も自分自身も一瞬たりとも同じではない。そのことをイヴはまだ知らず、マーゴは少し気づいたくらいで、涅槃寂静にはほど遠い。さて、2人を客観的に見た自分はどうかといえば…。

●物語(50%×5.0):2.50
・面白い。オチも良く、味わい深い。

●演技、演出(30%×4.0):1.20
・マーゴもイヴも本当にいそうなリアリティ。

●映像、音、音楽(20%×3.0):0.60
・いろいろ良い部分もあったかもだけれど、気付いてないです。
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