けめこ

仁義なき幕末 -龍馬死闘篇-のけめこのネタバレレビュー・内容・結末

仁義なき幕末 -龍馬死闘篇-(2023年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

序盤は、わーーーわだっくまに煙草つけさせる松田凌!!!とか、狂犬鈴木勝吾にヘタレ矢崎これが見たかった!この新選組が最強!!!石黒さんの貫禄やべえ!小野くんの色気!岡宏明の和装で優勝!礼生くん下手したら刀剣乱舞より動いとるわい!!ともるんの優しい目が大好き…!とかまあ、ただ顔のいい男たちがずーっとスクリーンに映ってるって事実を楽しんでて、ストーリーはまあまあまあ、期待もしてませんし、って気持ちで見てたんですが。気づいたら引き込まれてた。

剛力彩芽がいいんですよ…最初から龍馬じゃないことなんてわかってて、だけど「自分が愛した男を超えて、自分が龍馬より愛せるくらいになるなら」って恭次をけしかけてくれてて。成長を信じてくれてる理想の妻…。理屈じゃなくて愛した女のために残る、っていう展開はありがちだけど、このおりょうさんなら許す。説得力あった。ちゃんと龍馬は龍馬で胸の中に大事にしまっておいて、ずっと恭次のことを見定めていて、叱咤激励に応えた姿を見て、恭次のことは恭次として愛してくれたわけで。なんていい人なんだ!

そして全てがあの近江屋に収束するストーリー展開!!序盤のヤクザの抗争とか、要る?ってくらいチープだったんだけど、たとえ予算やらもろもろの都合でチープになったとしても、要る…!!!現代での人間関係が、まさか150年前の近江屋で再現されるとかそんなことある!?しかもそれぞれ坂本龍馬、新選組、西郷の手先として、歴史上も対立関係にあった立場を背負って!歴史と全く関係なくただここでたまたま集合しました、じゃなくて、歴史の大きな流れ、歴史上の人物のそれぞれの思惑と、現代での因縁が綺麗に絡み合って…シンプルに面白い!!ちょいと調べてみたら、西郷が龍馬を狙った説もあるんですね…!!

そして歴史と現代が重なるターンのあとは、あの変な子に対する逆襲と、相棒かと思われていた男たちの巨大感情…!正直途中まで、あの変な子の必要性わかんなかったけど、近江屋事件の直前、こっち向いてしゃべったから、ああそういう役割!と。そして終盤の発言から、たぶん今回たまたま出てきて変なことしてるんじゃなくて、さながら刀剣乱舞の時間遡行軍よろしく、何度も歴史に介入していじくってみては、次はどうなるのかな~♪ってやっちゃってる系の子なんですね。恭次と一平にとってはその場が全て、たった一度の物語だけど、この子にとってはおそらく、無数に試してきた物語のうちの一つにしかすぎない。
この子という装置があったからか、最後の下克上のインパクトがすごい…!せっかく歴史を変えられたのに、そういう大局的な視点の問題じゃねえんだよ、とばかりに、個人的な恨みをここで爆発させる。まあ考えてみたらそれもそうよね、片や愛する女と結ばれ、片や大事な舎弟を自分の手でやらなきゃいけなかったんだもんね…そして一平には微塵もそんな気はないのに、皮肉にも歴史を守ったことになって、あの子への意趣返しにもなっているのがまた。

ムビステはいつもキャスト一覧をガン見するのですが、さすがに矢崎の再登場はなかった。あれはあれで終わり。でも勝吾くんとか礼生くんも普通にいるんだよなー!?さてどうなる。

まあ普通にキャストが全員好きですよね。.5の黎明期から引っ張ってて、特撮も出たの10年以上前ですって世代のこの安定感たるや…!
松田凌はいつも何をしても完璧なはずなのに、今回なんかちょっと、いい意味での持ち味の小者感出ちゃってるよどうした?って序盤思ってたけど、まあ見事に計算でした。どんどん漢になっていった。
わだっくまさんも然りで、矢崎も含めて、タレ目の男ばっかり集めてなぜこのヤクザものをやろうとしたしwわだっくまさん、凄んでても良い人っぽさが滲んじゃってるよwとか思ってましたけど、これもまあやられましたわ…。介錯しなきゃいけなくなったときと、時間が経過して「もうだいぶ慣れた」って言ったときが特に大きく変化したところだけど、どんどん優しさが消えて行って。でも最後の最後!!恭次を撃ったときは、いい人ではあるんだけどそんな人が今まで抑えてたものを爆発させた、っていう、ベースのいい人っぽさがちょっと復活しちゃった感じなのが良い…!親父さんへの義理は通そうとしてて、恭次は撃てない、けど龍馬なら撃てると…作劇も良い。
矢崎これで終わりなのもったいないな!でもよく考えたらムビステ1回主演してたわ。GOZEN見返したくなった。このヘタレからの大変身が見れるので。
小野健人の左之助めっちゃいい!!!原田左之助のパブリックイメージって、明るくて男っぽくて肉体派で、って感じだと思うんですが、男っぽさを色気で出すとは思わないじゃん!?
礼生くんはほんとに、あんま他と比べるのはあれだけど、黎明より良かったよ…俺たちが見たかったのはこれだ…。キャラクターがただの集団にならずに、ストーリーの中で個々の立ち位置、役割があって動いているから、一人一人の役者も輝けるってもんでな…。物腰は丁寧なのに煽りまくってくる沖田、最高でした。死に方不憫なのも、作中での役割がここ、って感じでむしろ引き立つ。登場シーンすべてにちゃんと役割と意味があってよかった…。
ともるんの優しい目が…ほんとに好きだ…。何をどう逆立ちしても善人顔。この人なら大丈夫、っていつも思う。だから龍馬に刀を向けたときも、この優しい人がこんなにするまでのことなんだ、死への恐怖とか恭次への疑念はそれほどまでのものなんだ、ってわかったし、でも絶対にこの人は斬りかからないなとも思えた。
岡くんもっと立ち回り見たかったけどそれは舞台に持ち越しかな。セイバーの夏祭り浴衣回で沼がさらに深まったので今回もとてもよかったです。キャストの中では年下組だと思うんだけどむしろ大人っぽくて、知的な雰囲気もしっかりあって、あの本宮さんと密談シーンとかしても堂々としたものだった!
石黒さんは土方というより近藤っぽくない?と思ってたけど、士道不覚悟のくだりをやるなら土方だわ…。あの場のいちばん上にいる男として石黒さん以上の適任はいない。
鈴木勝吾ですか?やりたいようにやってて、でもただトリッキーにやればいいってもんじゃなくて彼なりの綿密なプランの上でああなってるのは知ってるので、ただ最高でしかなかったです。めっちゃ苦悩してるかはっちゃけてるかの両極端のときの鈴木勝吾が特に好きかも。

血しぶきとかタイムスリップとかちょいちょいチープな感じはしたけど、そこは東映特撮オタクなので気にならなかった…と言いたいところなんだけど、最近ニチアサのテレビシリーズの進化、特にCGとかLEDウォールとかの撮影技術の進化がすごいから、リアル小道具関係のチープさはちょっとどうにかならなかったかな!?とは思ってしまったかな。デジタル技術の進化の反面、昔ながらの技法の方は進化が頭打ちなのだろうか…にしてももうちょっと何かあったはず…!
でもまあ減点する部分を探せと言われればそこくらいだし、全体としては楽しかったです!舞台までの期間が短いので早く観たい!!
けめこ

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