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メグレと若い女の死のbackpackerのレビュー・感想・評価

メグレと若い女の死(2022年製作の映画)
3.0
『仕立て屋の恋』や『髪結いの亭主』で知られるパトリス・ルコント監督の、約10年の間が空いた新作は、ジェラール・ドパルデューの説得力あるビジュアルも相まって、渋く重厚な人間ドラマでした。

状況を辿り、証言を積み重ね、人の内なる心の機微を捉える中から、とある若い女性の死の謎を解き明かす。
事件の真相究明にむけ、丁寧に丁寧に物語が進みます。
老警視のメグレは、縦にも横にも大柄な巨漢で存在感がある人物にも関わらず、相手の心に寄り添う繊細さをもって捜査を進める人物。そんな彼の顔には、常にどこかに影があり、哀しみを湛えています。映画全体の雰囲気が仄暗く物憂げということもあり、メグレの過去が紐解かれるにつれ、彼の苦しみが伝わってくるかのよう。
しかし、パイプの吸い方指南が伝えるユーモアの片鱗が、この作品が暗いだけではないことを教えてくれます。


話の作りから、観客が与えられたヒントを基に推理していく探偵ものというよりも、物語の中に没入し、その人間ドラマを楽しむのが良いのではないでしょうか。
映像としては、1950年代戦後フランスの貧しさと華やかさが入り混じる不思議な空気感がリアルに再現されているように感じられましたので、是非シリーズ化してほしいところです。
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