戦争の亡霊
2015年に国産ゴジラの新作が公開されると聞いた時、山崎貴監督がメガホンを取るものだとてっきり思っていた。
その予想は外れたわけだが、『シン・ゴジラ』以来、7年振りの国産実写映画として晴れて山崎監督による新作が公開される運びとなった。
戦後、日本。さながら「戦争の亡霊」として登場人物の前に立ちはだかるゴジラは、『シン・ゴジラ』が震災のメタファーとして無機質で容赦ない存在として描かれていたのとはまた別の切り口で描かれる。
冒頭の『ジュラシック・パーク』のオマージュに始まり、『ジョーズ』などスピルバーグ作品へのわかりやすいリスペクトが満載だが、『ダンケルク』など全体的にハリウッド大作のテイストに近づけているのが興味深い。
予算的にいえば公開中の『ザ・クリエイター 創造者』の何十分の一だと思うが、それでも邦画実写のVFXでこのレベルまで到達できた点は大きいだろう。山崎貴監督は新作のたびに「映像として何か新しいことをやる」と以前に語っていたが、その言葉が理想的な形で結実したともいえる。
VFXは強度な反面、ドラマパートは若干の物足りなさも感じた。神木隆之介、浜辺美波の「らんまん」コンビはじめ役者の演技で何とか見られるが、このあたりは古沢良太との過去のコンビ作ではそこまで感じなかった点なので台詞回しの問題もあるのかもしれない。
とはいえ戦争映画として「国体の護持」を明確に否定している点は見逃せない。一見すると愛国主義的な行動を取ると見せかけて、「国」というものを徹底的に否定していく。物凄く意地が悪い(褒めてます)。
『シン・ゴジラ』は話の骨格が日本を守るため国家公務員が頑張る話なので、このあたりゴジラを題材にしながらとても監督のカラーが出ていて面白い。