"生きて、抗え"
日本のアクション実写映画史上最高傑作、多分そう言って良いだろう。
本作を超える作品は、今後しばらくは出てこないのではないか。
邦画でも洋画でも描かれてきた大人気キャラクター"ゴジラ"であるが、その圧倒的な力の描写は本作がずば抜けている。
膨大な制作費を投じた洋画の描写を凌駕したと言っても良い。
多分それはゴジラに対する愛がなした技なんだと思う。
駆逐艦の砲撃をものともしない頑強さ。
熱線で駆逐艦を海の藻屑とし、東京の街を一瞬で焦土と化す攻撃力。
もはや神々しさを感じるほどである。
その圧倒的なパワーを前に、映画を見ている我々も絶望感を感じざるを得なかった。
このような圧倒的なパワーを持つ敵にはパワーで対抗しても勝てない。
知恵を振り絞って、パワーではなく知略で勝つ。
この構図は『シン・ゴジラ』と同じではある。
『シン・ゴジラ』ではゴジラを冷却させる作戦であったが、本作では海の水圧を活用する作戦。
"ワダツミ作戦"である。
終盤"ワダツミ作戦"が始まるまで人類はゴジラに圧倒され絶望感しかなかった。
音楽の効果もあって『永遠の0』のような悲壮感が漂っていた。
それが"ワダツミ作戦"が始まるとどうだろう。
作戦開始と同時にゴジラのテーマ曲が流れ始めた時、全身の鳥肌が立った。
そして何よりすごかったのが、映画の結末である。
戦前、人の命は二の次であり、無理な作戦、無理な装備が是とされていた。
なんなら生きて帰ることは恥とされ、特攻から逃れることなど人ではないとされていた。
でも戦争は終わった。
時代は変わった。
作戦は人命を尊重するものとなり、装備も安全性や緊急脱出が考慮されるようになった。
そして、家族のため、自分を生かしてくれた人のためにこそ生きることが尊いとされるようになった。
誰もが多かれ少なかれ後ろめたさや後悔を抱えながら生きている。
ケジメをつけることは大事かもしれないが、死んではいけない。
むしろ、後悔や後ろめたさを感じてる人のため、生かしてくれた人々のためにこそ、僕らは生きなければいけない、のだ。
海戦の場面を主軸とした傑作『永遠の0』を撮り、昭和の風景を舞台にした傑作『always 3丁目の夕日』を撮った山崎監督だからこそ、それらのエッセンスを取り入れた本作を至高の完成度に導くことが可能だったのは間違いない。
正直本作の広告を見た時、『シン・ゴジラ』という最高傑作がありながらどうして今撮る必要があるのか、と思った。
しかし、本作は『シン・ゴジラ』を超えてきた、または、比肩した。
そんな本作が世に出てしまった今、次回"ゴジラ"をテーマとした作品を世に送り出すハードルが信じられないくらい高くなったのは間違いない。
それぐらい素晴らしい作品だった。
