ぎー

ナイトクローラーのぎーのレビュー・感想・評価

ナイトクローラー(2014年製作の映画)
3.5
【第88回アカデミー賞特集4作品目】
"他人の破滅の瞬間に、カメラを持って現れる"
面白かった。
思い返すとなかなか無い、パパラッチに焦点を当てた映画である。
邦画では福山雅治主演の『SCOOP!』という良作があったが、少なくとも個人的には、パパラッチの本家、アメリカの映画としては初鑑賞である。
そして、改めて鑑賞してみて、言葉を選ばずに言うと、最低最悪な、底辺とも言える職業だと思った。
『SCOOP!』はまだ、有名人を対象にゴシップを撮りためていて、個人的にはそれもどうかと思うが、世間的には有名勢などと言われたりするところはある。
一方本作のパパラッチが扱うのは、有名人でもなんでもない、一般人の、人生で最も辛く厳しい事件事故の場面である。
こんなことが現実にあるのかどうか、ぼくはよく知らないが、やっている事は最悪である。
そこに倫理観なんてものはない。
ただ残念ながら、というか幸いにというか、倫理観のかけらもない最低最悪の所業を扱っているが故に、映画としては非常にスリリングで面白い、傑作に仕上がっている。

一方で、ビジネスなんて綺麗事ではない、という事も真ではある。
大手や圧倒的な才能でもなければ、人が0から成功するためには、何らかの無理をしなければならないのは事実だと思う。
主人公ルイスは学も職も家族もコネも知識もお金もないところから身を立てなければならなかった。
だから、本やネットで情報を漁り、先輩の方法を真似して、見様見真似で投資して、しゃかりきにテレビ局に営業をした。
そして、日常的な事件事故のセンセーショナルな場面を撮るという、他人がやらないできない事に取り組んだ。
ビジネスで成功するために、これ以上に必要なことがあろうか。
おそらくない。
綺麗事ではないが故に、そこに夢や希望は全くないが、ハッとさせられる映画であった。

それにしても相変わらずジェイク・ギレンホールの演技はすごい。
特に本作の倫理観や人間味を失った主人公はハマり役だった。

強盗殺人事件の現場に不法侵入してスクープを撮る場面。
その殺人事件の犯人と警察が銃撃戦、カーチェイスをするように仕組んで、犯人の車が横転したところをアシスタントに撮影しに行かせて、アシスタントが射殺される様子をカメラに収める衝撃の場面。
こういう映画は勧善懲悪で、倫理観のない主人公ルイスがとっちめられて終わりそうなところ、事業を拡大していく様子で終えるラスト。
印象的で衝撃的な場面の多い、本当によくできた映画だった。
ぎー

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