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怪物の6のネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

いや、これを小学生二人にやらせるのヤバいだろ是枝裕和。そしてラストシーンのカタルシスどう考えてもヤバいだろ。色々と喰らった一本でした。
誰もが持つ疑念の目。「斜めに構えるから本質が見えてこない」そう劇中で言い放ったのは高畑充希でした。怪物という映画の中で、ミスリードを続ける前半の意味はここに効いてくる。観客である俺達の誰もが怪物は誰なんだ?誰が善で誰が悪だ?と考える中で、その思考の浅はかさを痛感させてくる。誰もが怪物ではなくて誰もが誰かにとっての怪物である。目に見えるだけのものでは決して本質は捉えられなくて、本当は何者なのかは一人の尺度では決して測れない。それは自分自身について考えてもそうでした。自分は普通じゃない、幸せになれない、大切な人の期待に応えられないと苦しむ二人を見ていて胸が押しつぶされる思いでした。みんな誰もが自分の気持ちに正直に、素直に生きられたら良いけど、一人では生きてはいけない俺達人間にとっては、それは雲よりも手の届かない存在なのかも知れんですね。
そんな彼等の「僕達生まれ変わったのかな?」「何も変わらないよ」という会話に心から救われる。苦しくも多くが叶わない現世ですが、理想の自分になれない、世間の理想になれないそんな自分も愛していいという人生讃美を感じました。そのままの脳でいいし、そのままの自分でいい。美しすぎて、幻想的で、でもどこか温かい、映画史に残る圧巻のラストシーンです。
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