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Mannequin in Red(英題)のhorahukiのレビュー・感想・評価

Mannequin in Red(英題)(1958年製作の映画)
4.0
消えゆく牢獄の輝き

初アルネマットソン!ジャーロの先駆的作品として知られているスウェーデン産のホラーチックなミステリー。オートクチュールサロンが舞台なため画面が超オシャレ&ポップで見てるだけで眼福すぎた😂そんな華やか舞台に蔓延るドス黒い悪意に夫婦探偵が挑む!

Folk Mellvig原作のカラーシリーズ2作目らしい。行方不明中の有名モデルの捜索にあたるため、夫婦探偵(ジョン&カイサヒルマン)の奥様カイサがオートクチュールサロンにモデルとして潜入捜査。ある日、ショーケースに飾られたマネキンの背中にナイフが突き刺さっているのが見つかる→そのマネキンが行方不明のモデルだと判明…。それを機にサロン関係者が次々に殺されていく…。

『プラダを着た悪魔』のメリルストリープのような厳しいサロンオーナーのもと、その養子ボビー、甥リチャードと姪ガブリエル、現場を仕切ってるやり手なリンデル。オーナーの後釜争いは水面下でドス黒い渦を作り出し、遺書の書き換えや4つの短剣、謎の手紙に脅迫リスト、そして17世紀から続く歴史をも巻き込んで混沌としていく。それでいてコメディタッチなシーンが多くて結構笑いながら見てた😂

ビルの上棟式をしない方針のオーナーに対して、「上棟式をしろ!」と抗議する建築会社側の抗議が、ビルに首吊り自殺してるマネキンを毎日のように置いておくっていうイカれ具合。探偵ものにお決まりなポンコツ助手は独自に捜査してたのを怪しまれて犯人として報道されてるし、途中から如何に捕まらないか…に執心してるのもポンコツ過ぎて笑える!😂

内容的にはどうしても『モデル連続殺人』や『悪魔のような女』を思い出してしまう。『モデル連続殺人』のようなドギツイネオンはないけれど、飾られている衣服や意匠が煌びやかで常に画面がカラフル。その煌めくような色彩の中を、キャラクターたちの縦横無尽な流れるようなインアウトを流麗に動くカメラが捉えつつ、画面外の動線まで意識させる映像がとにかくカッコ良くて高揚感が凄い!各カットが緻密に練られているんだろうなって思うし、手を緩めることなくそれをラストまで徹底している。

そのカメラワーク含めた映像演出の凄みは恐怖演出にも活かされており、それまでの色彩から暗闇が支配的になることを起点として背景の闇に埋没するかのような朧げな殺人鬼を装置の音により実在化させたり、カーテンの揺れへ向かう中で視点を客観→殺人鬼→客観と移動させることで被害者の視点が単なる闇でなく殺人鬼を既に捉えてきたことを遡及的に理解させて恐怖とする匠さ。しかもコメディシーンで挟み込み、その落差のギャップでどちらかというとコメディ側を際だて、それが本作の殺人や死が可視化されるプロセスの嫌な感覚の元凶を浮き彫りにする。そしてそれは「見世物」への批評的な態度をも窺わせるし、mannequinを冠するタイトルへも返ってくる。

古物に囲まれたオーナーは歴史に囚われた存在であるわけで、その牢獄を牢獄のままに侵略行為を許さないような展開は、スウェーデン史全然知らないからわからないけれど、それを希望と捉えているのか『サンセット大通り』的な消えゆく輝きだとするのか。サプライズ的なラストのあの行動からすると後者かその延長線な意図のような気もする。どちらにしても虚しく響き渡る「ドン」という落下音が印象的だった。
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