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チップス先生さようならのクレセントのレビュー・感想・評価

チップス先生さようなら(1939年製作の映画)
4.2
生徒諸君! ウィンライト君の言葉は実に大げさである。私を誉めすぎておった。だが大げさは彼の家系だから仕方がない。(笑) 一度彼の父親を罰したことがある。ラテン語の成績で1点をつけたのに彼は大げさに7点にしたからだ。(笑)私は永年本校を見続けてきた。年は取っても君たちの顔だけは忘れない。どうかこれからもこの年寄りを訪ねてきてほしい。名前は思い出せなくとも。ボケたとは思わんでいただきたい。私は今の君たちを覚えているのだ。そこが肝心だ。私の中では君たちがいつまでも少年のままだからね。例えばこのジョン・コリー氏は今ではわが校のりっぱな理事長だが、私にとって彼は今でもラテン語が苦手なやんちゃ坊主なのである。(笑)

教育の荒廃が叫ばれる今日、日本においても当時は貧しくとも素晴らしい環境で教育を受けられたことを感謝せざるを得ない。仰げば尊しわが師の恩を口ずさむたびに、その甘い感傷的な旋律に遠い昔が偲ばれる。このフィルムもそうした名作の一つとして数えられているが「この思い出もいつの日かは楽しからずや」なのであろう。
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