クレセント

不倫期限のクレセントのレビュー・感想・評価

不倫期限(2010年製作の映画)
4.2
なんか様子が変よ、そばで妻がそういった。夫はあることでピークに達していた。もう黙っていられない。話さなければならないんだと。妻の気持ちなどどうでもよかった。妻と目が合った。二人は小さくほほ笑んだ。そしてそれが彼の引き金になった。恋をしているんだ。彼は呟くように言った。彼女はまだその意味に気づかなかった。ずっと言えなかった。つらかったんだ。彼は言い続けた。しかし彼のその言葉で妻の顔が
見る見る固くなっていった。それで告白したというの?何言ってるの?自分で言いだしたくせに。妻はそれだけ言うと言葉に詰まった。そしてしばらく考えるように黙った。しばらくして自分に言い聞かせるように小さくうなずいた。そう。そういうことね。相手は小娘なの?彼女は突然夫を見下したかのように言い放った。若いのがいいってこと?いやらしい。彼女は吐き捨てた。遠くで電話が鳴っていた。二人は動かなかった。私がばかだったわ。男を見る目がなかったのよ。そう言い切ると、初めて電話が鳴っているのに気が付いたようにその場を離れた。夫はただ茫然と宙を見つめていた。それは告白してしまった後悔なのか。それとも喉につかえたものが吐き出された解放感だったのか。私はこの緊迫した数分間がこの作品の見せ場だと思った。彼女が可哀そうだった。でも彼の気持ちもわかる気がした。男を見る目がなかったのよ。彼女の捨て台詞が心に残った。原題は火曜日、クリスマスの後で。ポーランド映画の佳作でした。
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