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OSLO / オスロのクレセントのレビュー・感想・評価

OSLO / オスロ(2021年製作の映画)
4.8
あなた方は時代遅れの完璧主義者です。だから古く形式ばった融通の利かない方法でいつも悲観的な結果を招いているのです。ノルウェー人である主人公の男はイスラエルの外交官に詰め寄った。外交官が答えた。それがアメリカが望むやり方なんだよ。そこで主人公が言った。だから別のやり方を試みたらどうです。個人同士の形式ばらない議論で、それも人目につかない場所でね。外交官は否定気味に答えた。君、イスラエルの公人がPLOの人間に会うのは違法だよ。ただ民間人なら可能かもしれない。この言葉に主人公は、イスラエルもPLOとの打開策を模索していることを感じたのだった。この物語の主人公夫婦はノルウェー人だった。彼の妻はノルウェー外務省の職員だった。彼女は職務中に中東で遭遇したイスラエル軍とPLOの若者同士の悲劇的な光景を忘れなかった。そしてそのことが彼女の心に正義の灯をともした瞬間だった。彼女は秘密裏にPLOの財務大臣にあった。大臣は国際的に自国が認められていないことに憤慨していた。彼女はそのことを副外務大臣に話した。彼は拒絶した。それはノルウェーの中立性が脅かされるからだよ。彼女は答えた。全ては民間の研究所主催の会議で知り合ったことにするのです。外交ルートはすべて無しです。ただビザだけはお願いします。しばらく考えた末副大臣は答えた。わかった。ただここだけのことにしよう。アメリカにも話さないように。この瞬間にこの無謀ともいえる秘密交渉が始まったのであった。外国との契約交渉をこなしてきた身とすると、この映画が伝える大切なことを改めて思い起こす。はじめは無謀ともいえる想いがある。それが具体化するにつけ交渉相手が増え、そして更なる解決が待っている。何処にも問題があり、誰にも野望がある。これらが絡み合い、解決策がみつかると交渉事は進んでいく。だが合意は一時しのぎでしかなく、時は新たな問題を抱えていく。それにしても交渉事に酒と料理はつきもの。酒は壁を溶かし、おいしい料理は会話を弾ませる。誰も知らない中で今も誰かが何処かで何かの話を進めているのだろう。
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