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コリーニ事件のクレセントのレビュー・感想・評価

コリーニ事件(2019年製作の映画)
4.8
今もこの車に?彼が外に出ると幼馴染の女性ヨハナが立っていた。久しぶりだった。挨拶が済むと彼女が言った。弁護士として成功した?彼はちょっと戸惑ったが言った。国選弁護人になった。そう。誰かの弁護をするの?君のお爺さんを殺した犯人をね。何ですって!?知らずに引き受けたんだ。彼女は後ずさりした。断るんでしょ?やると言った以上投げ出せないよ。中立になれるの?そう言われて彼はきっとなった。君のお爺さんは肉親じゃないよ。それを聞くと彼女は居たたまれなくて叫んだ。そんな人、弁護しないでっ!そう。そうなのだ。彼にとっても恩人だった。この車も彼からの贈り物なのだ。しかしそれからの彼は自分を捨て、弁護士になって初めての裁判に立ち向かっていくのだった。そしてこの物語の終盤で、彼が自らの教授でもある被害者の弁護人に対して詰め寄っていくシーンは、法に跪く弁護士としてこの物語最大の見せ場となっている。
第二次大戦中に数十万人の民間人が、ナチスの親衛隊や国防軍の報復措置で殺害されたという。そして1968年、ドイツではいわゆるドレ―アー法が連邦議会で可決された。そしてこの法律により無数の戦争犯罪者が刑罰を免れたのだった。この物語は一人の若い弁護士が、国が定めた法律によって多くの戦争犯罪人が野放しになっていることへのアンチテーゼとして戦う姿を、見事に描き出したことで世界中のベストセラーとなった小説の映画化である。私が好きなトム・クルーズが演じた彼の初期の作品、ザ・ファームにも似たリーガル・サスペンスものとしてその国の法曹界の闇を見事に暴き出した魅力ある作品だった。
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