たにたに

マエストロ:その音楽と愛とのたにたにのレビュー・感想・評価

4.2
✨2024年2本目✨

映画ファンとしては「ウエストサイドストーリー」の作曲家として有名なレナード・バーンスタイン。
日本の名指揮者、小澤征爾さんとも深い交友関係でありました。

そんな彼の半生を描いた一本。
主演ブラッドリー・クーパーの最高傑作と言っても過言ではない、とてつもない演技力は必見です。

🟢妻・フェリシアとの関係性
チリ出身の女優フェリシアと出会い、結婚。
3人の子供に恵まれます。
この映画は、バーンスタインのキャリアを讃えるものというより、彼の深い苦しみを妻の視点から描いているものなのです。

作品内で直接的な言葉としては出てきませんが、彼は同性愛者であり、物語の始まりも男性とのベッドシーンからでした。
オーケストラの一員と関係を持ったり、講師として指導する学生と関係を持ったりするのですが、妻フェリシアはそれに気付いている。
どちらかというとバーンスタインは普通に公の場所で男性とキスをしたりするので、見ているこちらが「えっ?」となるほどです。

フェリシアは彼の性的指向を理解した上で結婚をしている。そこに限界は生じます。
通常なら夫婦関係は崩壊するはずです。
フェリシアが元気をなくしていく様子も明確に感じとることができるのですが、彼から受ける愛は本物であったし、ステージに立つ彼は誰よりも輝いていたし、何より音楽を愛していた。それが彼女を踏みとどまらせたのです。
音楽を愛する夫を、彼女は否定することができなかったのかもしれません。


🟢多様性への理解
バーンスタインは、
指揮者であり、作曲家であり、教育者でもありました。テレビにも出演し、インタビューに答えるシーンがあります。

"演者は外交的であり、創作者は内面を重視する"

様々な仕事もこなし、クラシックからミュージカル、ロックなどの多岐にわたる音楽ジャンルへの理解も深い。

さらに、人間に対しての理解も深く、己の欲や愚かさについて語る場面もあります。
ここに関しては非常に彼の苦しみを表しているかのように思いますが、それも受け入れて人を信じることに帰着するあたりは学ぶべき心の持ちようかもしれません。


🟡お気に入りシーン
ワンカット約6分の指揮をするシーン。
これはすごいです。
感情を込めて演技しているというレベルではありません。
ブラッドリークーパー史上最高の演技かもしれません。
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