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ぼくたちの哲学教室の小のレビュー・感想・評価

ぼくたちの哲学教室(2021年製作の映画)
3.8
北アイルランド、ベルファスト。プロテスタントとカトリックの対立が長く続いた同地域は発展が遅れ、子どもたちの教育環境としてふさわしいとは言えない雰囲気。

同地域の男子小学校では主要科目として哲学を教えている。校長先生の目的は<生徒たちに、人生において何が起きても対処できるよう感情をコントロールし、抵抗する力を身につけさせること。><かつて暴力で問題解決を図ってきた後悔と挫折から、新たな憎しみの連鎖を生み出さないために、彼が導き出した1つの答えが哲学の授業なのだ。>(公式ページ)

①異なる立場の意見を聞く、②自らの思考を整理する、③対話する、というプロセスによって、<自らの内にある不安や怒り、衝動に気づき、コントロールすることが生徒たちの身を守る何よりの武器となる>(公式ページ)。

校長先生をはじめとする先生と生徒のやり取りは文句なく素晴らしい。子どもたちに考える能力を身に付けさせる教育は私自身受けたかったと思えるもの。

最近ハマっている、アインシュタインとフロイトの書簡『ひとはなぜ戦争をするのか』で、フロイトは「文化の発展を促せば、戦争の終焉ヘ向けて歩み出すことができる!」と力強く宣言しているけれど、本作が描く教育はまさしく「文化の発展を促す」ものだと思う。

強く印象に残るエピソードがないこと、校長先生が哲学を教えるようになった背景の説明が少ないことで、娯楽的観点からはもうひとつノリ切れなかった。しかし、こちらの学校、卒業生のその後が気になるので、もし続編があるようなら是非観たいです。
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