わたがし

FLY!/フライ!のわたがしのレビュー・感想・評価

FLY!/フライ!(2023年製作の映画)
5.0
in 3D
 最高の3D映画。3Dで観て本当に良かった。飛行シーンの下品なカメラワーク、飛び出し特化のキャラデザ(くちばしがいちいち飛び出る)、会話しながらずっと前後左右にキャラクターが動き続けるのも全部最高。奥行き一点張りのマリオの池袋サンシャインIMAX3Dの何倍も素晴らしい飛び出し3D体験だった。
 久しぶりにIMAX以外の3D(REAL D式)を観たけど、画面サイズが控え目なぶん、フレーム全体での立体デザインが把握できるのが快感だった。箱庭立体ショットのかわいらしさとかもIMAXでは体験できない。多少のクロストークは感じられるけど作品自体の3D設計の巧さもあって何のストレスにもならない。客入らないってわかってるのにずっと3Dやってくれるイオンシネマに感謝。
「生き物が飛び回る画」というのは何となく3D映えしそうという先入観があるけど、実際のところそうでもないと思う。飛んでいる生き物以外の物体が全てその生き物から離れていて、距離を感じさせるものがない瞬間が多いから。空も宇宙も無望遠なので凹んだだけの2D映像になってしまう。この映画は恐らくその落とし穴も把握して回避して飛行シーンを作っていて、雲を掴める物体化(カートゥーントーンだからこそできる演出)させたり、飛行シーンの見せ場ポイントを何らか(木とかビルとか)の密集地帯に限定させたりしている。そういう目が楽しい飛行シーンが過剰なぐらいどんどん出てきて本当に楽しい。絶対これらがやりたくて後からストーリー後付けしてる。イルミネーションは本当に素晴らしい会社。
 脚本はいつものイルミネーションという感じで、本当に根からストーリーにそんなに重きを置いていないのか、低予算が故に練る時間がないのか、脚本至上主義ディズニー一派へのカウンターをやっているのか真意はわからないけど、もはや少し安心感がある。ピカイチの楽しい映像というのが大前提だけど、イルミネーションの映画を観るとやっぱり映画は脚本だけが全てじゃないんだと思う。
 ただ、この素晴らしいスペクタクルがもし素晴らしい脚本によって語られ、あの飛翔シーンのひとつひとつにドラマチックな特大のエモーションが乗っかっていたら、本当にオールタイムベスト級に好きな映画になっていただろうなとも思う。でも本当に楽しかった。
わたがし

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