Jaya

乱れるのJayaのネタバレレビュー・内容・結末

乱れる(1964年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

戦争未亡人礼子が切り盛りする亡夫の酒屋で義弟幸司は礼子に惚れているけどどうにもならないお話。幸司がなかなかのクチャラー。唐突な浦辺粂子が楽しい。

舞台は清水だと終盤に明言されますが、もう少し早く知りたかったな。スーパーマーケットが個人商店を駆逐する年代。今やそのスーパーたちもイオンに根こそぎ潰されたのかなあ。栄枯盛衰。

清水では殆どが決まったアングルからの固定の撮影だけで、舞台が際立っていたように思いました。会話に僅かに間を持たせる編集。違和感を持たせないこの独特の間は何だろう。堪らないです。

礼子こと高峰秀子の凄まじい演技力にずっと鳥肌が。店への自負や負い目を一瞬に感じさせる表情。やはり幸司への表情は圧巻で、ラストカットたるや。

幸司を死なせるラストは安直な気がして納得できませんでしたが、それを遥かに凌駕する名演を見せつけられました。

その幸司こと加山雄三も途轍もないハマり役。考えを掴ませないようで実は明快という、実に若者的な存在を表象していました。やはり表情が素晴らし過ぎる。

撮影も細かい演出が素晴らしく、2人のお互いの距離感が的確に映し出されるよう。特に清水からの電車のなかの撮影は微笑ましくて本当に美しい。

礼子と幸司は11歳の年の差ながら、礼子が感じる世代の断絶。たとえ亡夫も含めた口実であったとしても、この永遠の相似形とそこに仮託されるものが苦しい。

さらには新旧の時代の流れに乗ろうとするものと乗れないものの対比が強く映し出され、無常観だけでは割り切れない、時代に生きる意味を問われるよう。

撮影も演技も見惚れるようや美しさで、時代性のなかの人々のかたちが時代を超えて美しく冷徹に映し出されていた傑作でした。
Jaya

Jaya